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「ようこそ、外来種問題の世界へ」バックナンバー

0082015.12.15UP国内初、特定外来生物の根絶!-ケーススタディ:カナダガン-

 2015年12月、特定外来生物に指定している北米原産のカナダガン(Branta canadensis)は、それまでの防除事業が功を奏し、確認されている全ての個体の防除が完了しました。
 これは、個体数拡大の初期に対応し、被害の未然防止がされた事例であり、特定外来生物に指定された外来生物においては、初めてとなる国内での野外根絶になると考えられます。
 今回は、国内初の特定外来生物の根絶に関するカナダガンの事例について、その経緯と対策の内容を紹介します。

外来生物 カナダガン

 北米原産の大型のガンであるカナダガンは、ヨーロッパやニュージーランドでは狩猟や愛玩飼育を目的として意図的に導入され、爆発的に増加したことが確認されています。増殖率が高いため、放置しておくと個体数の増加、生息域の拡大を招きます。我が国の生態系等への影響としては、近縁種であるシジュウカラガン【1】 (絶滅危惧IA類)等との交雑といった遺伝的攪乱や、農業被害が懸念されます。
 平成26年5月、観賞用に導入されて野外に定着したカナダガンと異種間の交雑が確認されたことから、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)」に基づく特定外来生物に指定されました。
 一方で、指定される以前から、関係団体の有志による防除が進められ、問題が大きくなる前に有効な対策が実施された数少ない種でもあります。

カナダガンの我が国への定着

 1985年(昭和60年)、我が国で初めて外来種のカナダガン1ペアが静岡県富士宮市の公園で確認されました。このペアは公園に定着し、繁殖して個体数を増やしていきました。  1990年代になると、富士宮市の個体に由来すると推測されるカナダガンが、近隣の河口湖(当時:山梨県河口湖町、現:富士河口湖町)や丹沢湖(神奈川県山北町)で確認されるようになり、それぞれの場所に定着、繁殖して、年々その個体数を増やしていきました。
 そして、ついに2007年(平成19年)から2008年(平成20年)にかけての冬季、カナダガンが定着している丹沢湖から直線距離で約30kmしか離れていない相模川に、在来の近縁種で絶滅危惧種のシジュウカラガンが飛来し、外来種と在来種の交雑という生態系被害の発生が危惧される事態となりました。
 しかし、当時カナダガンは生態系に影響を及ぼす可能性はあるものの、被害に関する情報が不足している種と位置づけられ、特定外来生物には指定されていませんでした。

カナダガン

始まった防除

 発見から25年後の2010年(平成22年)には、カナダガンの生息数は関東地方で100羽に達しました。この状況を重く見た関係者らによって、2010年(平成22年)から丹沢湖でカナダガンの捕獲が開始されました。実際の被害情報が不足していることから、最初は、学術研究等を目的とした捕獲許可で定着していた9羽を捕獲し、7羽を飼育施設での終生飼育、2羽は行動圏調査との位置づけで、個体識別用の足環を装着して放鳥するという方法が採られました。
 続いて、2012年(平成24年)4月からは河口湖においても捕獲が開始されました。こちらは農業被害なども確認されたことから有害鳥獣捕獲が許可され、2013年(平成25年)6月までに生息していた全個体42羽の捕獲が完了しました。
 そして、カナダガンによる生態系等への被害情報が整理されたことにより、2014年(平成26年)5月には特定外来生物に指定されました。

国内初の特定外来生物の根絶へ

捕獲個体数の累積
捕獲個体数の累積

 平成26年5月の特定外来生物に指定後、環境省では早期の野外排除を進めるため、カナダガン調査グループを主体に関係者と連携して積極的な防除を進めていきました。
 平成26年6月には静岡県(17羽)で、また本年6月には長野県(1羽)、7月に神奈川県(1羽)、11月に静岡県(2羽)及び徳島県(2羽)と防除が行われてきました。
 そして、平成27年12月4日に茨城県牛久沼周辺で2羽(交雑1羽を含む。)の防除に成功したことで、人が関与したことで我が国に定着したカナダガンについて、確認されている全79羽の個体の防除が完了しました。
 これは、特定外来生物に指定された外来生物においては、初めてとなる国内での野外根絶になると考えられます。
 侵略的外来種が定着してしまった場合、定着初期段階における早期発見と早期防除が極めて重要です。被害が顕在化する前に迅速に対応する方が、顕在化してからの対応に比べて根絶ははるかに容易であり、生態系等に与える影響も少なくて済みます。
 そんな、これまでのコラムでも紹介してきた早期発見・早期防除、被害の未然防止を実現した事例と言えます。

継続されるモニタリング

「求む!目撃情報 特定外来生物カナダガンを探しています」(環境省)
「求む!目撃情報 特定外来生物カナダガンを探しています」(環境省)
(クリックするとPDFファイルが開きます)

 鳥類は広域的に移動し、生息することが可能ですから、把握できていない個体が国内に生息している可能性があります。そのため今後も、日本野鳥の会や鳥獣保護区管理員等の協力によるモニタリングを継続して実施し、人の関与により定着した個体が確認された場合は、防除を実施することにしています。
 また、チラシを作成し、目撃情報を収集するための呼びかけ等を強化していきます。
 なお、人為によるカナダガンの新たな定着を予防する必要があることから、特定外来生物の指定は継続されます。

※本稿は、「外来種被害防止行動計画」p.56をもとに改変しました。


用語説明

【1】相模川に飛来したシジュウカラガン
当初はカナダガン(Branta canadensis)の1亜種に分類されていましたが、2012年(平成24年)に発行された「日本鳥類目録 改訂第7版」より別種(Branta hutchinsii leucopareia)として扱われています。

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