雨の多い季節になってきました。草木も、雨に濡れてより一層みずみずしさを増すようです。
そんな道端や草原の草を使った遊びの一つに「草玩具」づくりがあります。子どもの頃に、ササの葉を千切って草笛にしたり、シロツメグサ(クローバー)やレンゲを編んだ花の冠を作ったりした経験を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、そんな草を使った玩具遊びをテーマにした本などを紹介したいと思います。
初心者にもわかりやすい入門書として今やバイブル的な人気を呼ぶのが、2004年7月発行の『作ろう草玩具 ―身近な草や木の葉でできる』(築地書館)。著者の佐藤邦昭さんは、玉川学園小学部教諭で、理科教育に携わるかたわら、自然観察の指導や草笛、草花遊びの普及、草玩具の収集などを行っているそうです。
この本で紹介している草玩具には、バッタやヘビ、ネコジャラシの馬やススキの傘、麦わらのホタルかごなど素材も形状もさまざまです。火の鳥や西表島の熱帯魚など名前だけでも興味のそそられるものも。全20作品の作り方を、写真と図解で丁寧に解説していますが、単に作り方の教本にとどまらず、ちょっとしたエピソードも楽しい本です。
数多くある草玩具の中でもおすすめの一つは、草バッタ。形といい質感といい色といい、本物と見紛うほど。作り方も案外簡単ですから、ささっと作ってお子さんにプレゼントすれば尊敬の念とともに大喜びされること請け合いです(ただし、虫嫌いの女の子にはイヤがられるかもしれませんのでご注意ください!)。
草玩具について、著者の佐藤さんは、素材として『草』を使うという意味だけでなく、「草野球や草競馬…などと同じ意味で『素人の』とか『遊びの』あるいは『本格的でない手軽な』といった意味をふくんでいます」と、序文の中で解説しています。つまり、身近にある材料で誰でも手軽に作って遊べる、ごくごく敷居の低い文化といえます。それでいて、案外本格的なものづくりが体験できてしまうところに草玩具のおもしろさがあるのではないでしょうか。
誰でも手軽にはじめられる一方で、実は奥深い「草玩具」が持つ蠱惑の世界を垣間見させてくれるおすすめの本があります。草玩具をさらに極めたい、よりマニアックな趣向の方にうってつけのその本は、沖縄県読谷村の自宅に『沖縄草玩具館』を開設している新崎宏さんの自費出版本シリーズ『手遊び草編み玩具』。現在、第3巻までが既刊で、近く第4巻を、発行する予定だといいます。
全巻オールカラーで、写真をふんだんに使って製作手順を図解しているので、草玩具特有の手順を一通り理解すれば、バリエーションを大きく増やすための指南書になることでしょう。
沖縄草玩具館には、日本各地の草玩具はもちろん、中国の田園地帯で作られているという草玩具など、大量のコレクションが所狭しと陳列されています。案内に立つ、『手遊び草編み玩具』の著者で館長の新崎さんのしゃべり出すと止まらない熱い語りとともに、来館者を圧倒します。
新崎さんは、
「博物館というと、展示を見るところですよね。ここでは、ただ見るだけでは伝わらない、草玩具の楽しさを、実際にいっしょに作って・遊んでみて、実感してもらいたいのです」
と言います。かつては『沖縄草玩具博物館』と名乗っていたのを、『沖縄草玩具館』にあえて改称したのも、そんなこだわりがあるからだそうです。
沖縄に行かれる用があったら、ぜひ訪ねてみてください。
館内は、草玩具のコレクションが所狭しと陳列されている。
最近は簡単には手に入らなくなっているワラを使った伝統工芸の技術伝承と記録保存をめざした取り組みも、各地で実施されています。
中でも、実技グループによる技術的裏付けの下で編纂され、各地で講習会のテキストなどにも活用されているのが、川崎市立日本民家園の『民具の作り方』シリーズ。
ワラ細工のほか、竹細工や草木染など、これまでに46冊が発行されていて、今後も続刊を検討中とのこと。手仕事の技術を、わかりやすい文章と図解で説明していますが、伝統技術の保存・継承を目的にしているため、ワラ細工や竹細工のなどの経験があって基本技術を習得していることを前程に編集された、中級者以上向けの冊子といえます。郵送での購入も取り扱っているそうなので、興味のある方は、ぜひお取り寄せください。
なお、民家園ではときどきワラ細工や草玩具の講習会なども実施しているようです。民家が立ち並ぶ園内で、ちょっと昔風の遊びを教わるのも楽しいひと時になるのではないでしょうか。
よかったです!!作り方はありますか。
(2022.11.02)
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