家庭のエネルギー消費を決める要因には、4つのファクターがあります。
従って、エネルギー効率の高い最新式の家電製品に買い替えたとしても、住宅環境や使用方法によっては、電力消費量の削減に結びつかないケースもあり得ます。
例えば、24時間365日、常に働き尽くめで家庭のエネルギー消費のベースとなる電気冷蔵庫は、設置場所の温度条件によってエネルギー消費量が大きく影響を受けます。室温が暖かければそれだけ庫内を冷却するためにエネルギーを消費します。寒冷地では、室内と庫内の温度差が小さいため、冷却に要するエネルギーは少なくて済みます。同様の理由で、気候が同じような地域の家庭でも、夏と冬では消費量が異なりますし、コンロや電気ポットなどの発熱体が冷蔵庫の近くにある場合には電力消費が増えます。家族構成の違いによって、冷蔵庫の開閉回数に著しい差が見られる場合も、冷蔵庫の電力消費量は大きく異なることになります。扉の開閉によって庫内の冷気が逃げれば、その分冷却しなければならないわけです。
図3-2は、冷蔵庫の買い替え効果について、環境エネルギー総合研究所で調査した結果を示したものです。旧型(2008年1?3月平均)と新型(2009年1?3月平均)で、電力消費に著しい違いが見られるようになりましたが、単に機器の性能による省エネ効果ではなく、住宅状況や使い方などを考慮に入れない限り、なかなか著しい効果は現れてきません。
家庭のエネルギー消費をもっとも左右する要素は、そこに暮らす「人」です。単身者世帯と2人暮らしではそれほどエネルギー消費量も変わりませんが、同じ3人暮らしでも「夫婦と乳児」、「夫婦と受験生」、「夫婦と社会人の子ども」、「高齢者夫婦とその親」では、エネルギー消費量やその特徴が大きく異なります。
「高齢者夫婦とその親」の世帯は在宅率が高く、暖房、照明、テレビにエネルギーが多く使用される傾向を示します。一方、「夫婦と受験生」の世帯では、生活時間帯のズレや行動の個別化等もあって全体的にエネルギー消費量が増え、特に、冷暖房と給湯のエネルギー消費が高くなる傾向が見られます。受験期前後でエネルギー消費に著しい変動を示すなど、季節変動に特徴があります。
生活へのこだわりや嗜好性、ペットの有無等によってもエネルギー消費は大きく影響を受けています。誰も在宅していない時間にペットのためのエアコンや照明がついている家庭が見られるなど、近年はペットのための冷暖房、照明、空気清浄機等によるエネルギー消費量も無視できないレベルになってきています。
家族構成の変化は、家族の誕生・成長・独立といった家庭のライフステージの進行に伴う生活スタイルの変化によってももたらされます。
夫婦の結婚でスタートした家庭に子どもが誕生し、自宅の購入や子どもの受験といった山場を越えて、子どもが独立し、夫婦2人の新たなセカンドライフが始まり…。各家庭は、時間の経過とともに、その生活スタイルをガラリと変化させていきます。図3-3は、そんな家庭のライフステージに応じたエネルギー消費変化のモデル図です。
例えば、給湯によるエネルギー消費は、シャワーの回数や時間によって大きく変わってきます。子どもが小学生から中学生になると、部活動への参加や清潔意識の芽生えなどによって、シャワーの利用が大幅に増加する傾向が見られます。
使用用途が多いものを効率のよい機器に換えるのが“省エネの基本”なので、このタイミングで「エコキュート」や「エコジョーズ」といった高効率給湯器を導入・設置すると、来たる増加量の抑制につながり、その省エネ効果をもっとも有効に回収できることになります。
“増える前に増やさない”ための効果的な先行投資としての機器買替えや住宅の省エネリフォームを考えると、我慢や無理をせず、快適性も阻害されない、「予防の省エネ」が可能となります。こうした「予防の省エネ」対策の例をエネルギーライフプランモデルにあわせて示してみたのが、図3-4です。
機器の買い替えや省エネリフォームを検討される場合は、長期的な家庭のライフステージを意識して、タイミングを見計らうと、効果的な省エネ対策につながるわけです。
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