神奈川県の北西に位置する神奈川県の旧藤野町(現在は相模原市緑区)にある藤野電力。
旧藤野町は、古くは甲州街道の宿場町として栄え、近年は自然に囲まれた芸術のまちとして移住民の受入れも盛んな地域です。人間にとって恒久的で持続可能な環境を作り出すための文化である「パーマカルチャー」の取り組みでも知られています。その市民活動のひとつに、「トランジション・タウン」という考え方があります。例えば、枯渇する可能性がある石油などの化石燃料に依存してエネルギーを大量消費する持続不可能な社会ではなく、再生可能エネルギーである太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせて必要最低限度の電力を自分たちで考えてシステムを作り上げていくなど持続可能な社会への移行をめざす取り組みです。藤野電力は、トランジション・タウンの活動から生まれたと言います。
今回は、藤野電力が取り組む自然エネルギープロジェクトのひとつであるミニ太陽光発電システムと、その普及を目的に開催しているワークショップの活動について紹介します。
藤野電力の「ミニ太陽光発電システム」は、その「ミニ太陽光発電システム」とは、太陽光発電システムを車用のバッテリー(鉛蓄電池)などにつなげた小さな自立型エネルギーユニット・システムのこと。コンセントやUSBにつないで電力を取り出すことができます。このミニシステムを制作するワークショップは、全国各地の関連団体・民間企業・行政などへと展開するほど活動の幅を広げています。
自立型のシステムなので、地震などの災害発生時など系統電力が停電した時でも、コンセントにつないでスマートフォンや携帯電話などの利用や充電ができます。
また、自宅の自立型発電システムに活用して「部分的なオフグリッド」を実現することもできます。電力会社から買う電力と自家発電するふたつの電力を組み合わせるわけです。例えば、家族みんなが集まるリビングだけはオフグリッドにしたり、停電時の避難対策として廊下だけオフグリッドにしたりと、さまざまな使用目的に応じてアレンジすることができます。
送電網と接続されないオフグリッドの自立型発電システムは電力会社の停電の影響を受けないため、災害発生時の緊急避難拠点としても有効です。
「ミニ太陽光発電システムの発想のきっかけは、2011年3月11日の震災による停電からでした」
そう話すのは、藤野電力のエネルギー戦略企画室室長の小田嶋電哲さん。
震災を機に日常の当たり前として世の中にあった様々な常識がほころびつつあります。毎日を安心に暮らしていくには、エネルギーも現在の中央集権型から、住民が自ら参加出来るような自立分散型へ移行していくことが求められます。そして、エネルギー消費自体を少なくしつつも、我慢ではなく、より新しく、より楽しく生きていけるような、暮らし方へと移行していくことも重要です。
「藤野電力とは、自然や里山の資源を見直し、自立分散型の自然エネルギーを地域で取り組む活動です。めざしているのは、エネルギーシステムの移行自体より、むしろそれによってもたらされる、地域の豊かな未来なのです」
藤野電力の自立型発電システムは、再生可能エネルギーを学ぶ環境教育のプログラムとして、エネルギーデザインを可能とする省エネルギー住宅へと発展していくことが期待されます。
今回で「いざという時の防災対策」は連載終了となります。
このコラムを通じて自然災害大国である日本に住む私たちが、過去の災害経験・教訓を糧として、「事前防災・減災対策」の大切さを知り、上手く自然エネルギーを活用して、安全・安心な生活への改善につながればと願ってやみません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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