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「ゲストハウスを旅する」バックナンバー

0082019.06.04UP蔵のまち須坂の古民家で育むさまざまな異文化交流-ゲストハウス蔵(長野県須坂市)-

 JR長野駅から「ながでん」こと長野電鉄に乗りかえて約20分、須坂駅からまちなかを15分ほど歩いたところにゲストハウス蔵があります。築130年という立派なつくりの古民家をできるだけそのままの形で残しつつ、2012年にカフェ併設のゲストハウスに生まれ変わりました。運営するのは須坂出身のオーナー山上万里奈さん。日本語教師の資格も持つ彼女は、ゲストハウスを通じて真の国際交流がしたいと考えています。

須坂は明治?昭和初期に栄えた「蔵」のまち

長野電鉄の特急パノラマシートは外国人に人気(先手必勝)

長野電鉄の特急パノラマシートは外国人に人気(先手必勝)

 ゲストハウス蔵がある長野県須坂市は、明治?昭和初期にかけて製糸業で栄えたまち。その繁栄をしのばせる蚕貯蔵用の「蔵」がまちに多く残されています。
 須坂市人口は約5万人。ぶどうやりんごなどの果物農家が多く、元製糸家の民家や「田中本家博物館」などの豪商の家は観光名所にもなっています。歴史がある質の高い建物が残っており、最近はそうした資源を再生させて新たに居酒屋や雑貨屋などのお店になるなど、新しい動きもはじまっています。
 お隣にあるまち小布施よりも須坂の気取らない穏やかなまちの雰囲気を気に入り、訪れる人も増えつつあります。また、山間には、日本の滝百選にも選ばれ紅葉の名所でもある米子大瀑布もある、まちなかの資源と自然のバランスがよい場所といえそうです。


須坂のまちなかは今も生活を伴う古い民家や商店が立ち並んでいる


築130年の古民家の内装は昔の風情を残し利便性を高めたつくり

 ゲストハウス蔵は、その須坂のまちなかにあります。築130年になる建物では明治時代には蚕を中国へ輸出していたという立派なもの。開放感漂うガラス戸の先には番台のようなチェックインカウンターと訪れた人たちがくつろげるラウンジがあります。客室の奥には中庭があり、その先には離れのまゆ蔵も。
 「できるだけ日本の伝統的なふすまや畳、床の間などのつくりを変えず、外国からのゲストにその生活を体験してもらいたい」という思いから、二段ベッドは置かず、お部屋もすべて畳に布団を敷くタイプを貫いています。

ゲストハウス蔵外観。内部の様子もわかりやすく改装

ゲストハウス蔵外観。内部の様子もわかりやすく改装

客室 日本の民家の風情をそのまま活かし清潔感ある空間に

客室 日本の民家の風情をそのまま活かし清潔感ある空間に

ゲストハウス蔵のマスコットキャラクター「ずくなし蔵べぇ」

ゲストハウス蔵のマスコットキャラクター「ずくなし蔵べぇ」


隣接のカフェ「La Vie Lente」は母親が経営 レトロ洋風な雰囲気

隣接のカフェ「La Vie Lente」は母親が経営 レトロ洋風な雰囲気

 ゲストハウス蔵の一角にオーナーの母親が営むカフェ「La Vie Lente」があり、2015年には敷地奥の元まゆ蔵の離れに雑貨店「Sketch in hike」もオープンしました。こうした施設が併設されていることで、宿泊者以外にも地元の人が足を運ぶきっかけとなり、宿のラウンジでも毎日のように地元の若者や年配者と旅行者がくつろぐ姿が見られるのもゲストハウス蔵の大きな特徴のひとつです。

日本語教師の資格を持つ山上万里奈さんが故郷須坂でUターン起業

ゲストハウス蔵 オーナー山上万里奈さん

ゲストハウス蔵 オーナー山上万里奈さん

 ゲストハウス蔵のオーナーは須坂出身の山上万里奈さん。山上さんは5年間日本語教師として日本と中国で勤務、飛騨高山の旅館で住み込みの仕事を経験したことでゲストハウスの経営に興味を持つようになりました。ゲストハウスを運営し、外国人観光客を日々受け入れることができれば、日本語教師の経験やこれまでに習った茶道や着物の着付けなど、人生経験を全部生かせると考えたからです。
 地元須坂にUターンし、開業資金を貯めながら改めて地元の人脈を発掘。最終的に須坂市長とも繋がりができ、応援してもらえるようになったそう。多くの人の支援を受けながらゲストハウス開業にこぎつけました。>

旅人や地域で働く外国人に日本語教育や交流インベントを開催

どろんこバレーイベントの様子

どろんこバレーイベントの様子

 山上さんが開業当時からこだわり、発信し続けているのが外国人向けの日本語レッスンです。ゲストハウス蔵に滞在する外国人ゲストのほか、地元在住の外国人に対して日本語レッスンを行っています。現在、須坂市には外国人研修生を受け入れる企業が増えており、タイ・中国・ベトナムなど国籍もさまざまな約500名弱の外国人の方が暮らしているそう。
 旅人だけでなく須坂に暮らす外国人と地元の住民をつなぐ役割になりたいと、日本語レッスンのほか、レッスンを通じて知り合った外国人を中心にゲストハウスに招いて母国の料理をつくってもらい、その国の紹介をしてもらいながら旅人や地元参加者と一緒に食べる料理イベントを定期的に開催。また泥だらけになってバレーボールをするなどの楽しいイベントにチームを作って参加するなど、地元の行事にも積極的に関わり、その繋がりを深めています。

須坂のぶどう農家とワーキングホリデービザの旅人を繋ぐ試みも

人の手より大きい人気のシャインマスカット

人の手より大きい人気のシャインマスカット

 もうひとつ、山上さんには大きな目標があります。それは、ワーキングホリデービザで日本を訪れる外国人と地元農家をつなぎ、須坂市をワーキングホリデーの入口のまちにするというもの。
 須坂市はぶどうやりんごといった果樹栽培が盛ん。近年は新規就農で須坂に移住した農家も増え、ぶどう農家が人手不足になることもしばしばです。新規就農者など若手農家を中心に英語を話せる方もいるため、ワーキングホリデービザを使い、就労希望の外国人には一度ゲストハウスに宿泊して農家と面談し、就業支援に繋ぐ活動も行っているそう。

山上さんとスタッフの明るさと面倒見のよさが最大の魅力

 外国語教育支援やワーキングホリデー支援など、硬派な活動も多く行っている山上さんですが、何よりこのゲストハウスの魅力は、たくさんの人を笑顔にさせる山上さんの人懐こさと面倒見のよさ。ここで働くスタッフもそのエッセンスをたくさん得て、旅人にとって居心地のよい楽しめる宿になっています。

ゲストは窯元などガイドブックには載らない多くの場所を訪問し大満足

ゲストは窯元などガイドブックには載らない多くの場所を訪問し大満足

スタッフも旅人や地元住民と楽しい時間を共有し思い出作りに貢献

スタッフも旅人や地元住民と楽しい時間を共有し思い出作りに貢献


 そのため毎年のように「帰ってくる」国内外のリピーターも数多くいます。こちらはわたしも何度か宿泊したこともあるお気に入りの宿のひとつ。大きな観光の名所はなくても、良い宿は作ることができる。そんな好例がこのゲストハウスです。
 居心地よく「ただいま」とつぶやきたくなるゲストハウス蔵に、あなたもぜひ訪れてみませんか?スタッフがとびきりの笑顔で歓迎してくれるにちがいありません。

ゲストハウス蔵
〒382-0086 長野県須坂市本上町39
TEL 026-214-7945
https://www.ghkura.com/
MAIL:info@ghkura.com

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