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「ゲストハウスを旅する」バックナンバー

0062018.10.02UP都内で味わう人と空間のやさしいあたたかさ-東京ひかりゲストハウス(東京都台東区)-

 東京は、世界で一番大きな都市。数多くのビジネスホテルやシティホテルがあり、都会的なサービスが受けられる。そんなイメージを持っておられる方も多いかもしれません。今回ご紹介するのは、大都市東京にあって、古い一軒家を改装し、ご家族でゲストハウスを経営中の「東京ひかりゲストハウス」です。東京の小さなゲストハウスには、どんな人がやって来るのでしょうか?

隅田川にほど近い地下鉄蔵前駅近くの一軒家ゲストハウス

木の扉と窓枠がかわいらしいゲストハウス外観
木の扉と窓枠がかわいらしいゲストハウス外観

 東京ひかりゲストハウスがあるのは、今若い人に人気急上昇中の東東京・蔵前。地下鉄蔵前駅から徒歩1分に位置するゲストハウスです。駅から近いのに、まわりの環境は小さな会社や問屋などが多く、夜は特に静かなエリアです。ここで築70年位ほどの木造の二階建ての一軒家を改修したゲストハウスがオープンしたのは2014年秋のこと。以来、アットホームな雰囲気とDIYとは思えないほど凝ったセンスあるインテリアが評判となり、大人気のゲストハウスとなっています。


長年の夢を叶え、DIYでつくりあげた空間は工夫もたくさん

 東京都内のゲストハウスやホステルと呼ばれる簡易宿泊施設は、ここ数年、東京オリンピックの開催決定や外国人観光客の増加に伴い急激にその数が増え続けています。その大きな特徴は施設の大型化。古いオフィスビルをまるごとコンバージョン(用途変更)し、ベッド数が100近くある宿も数多くあります。
 そんななか、東京ひかりゲストハウスはというと、ドミトリー(相部屋)と個室からなる全4室、定員17名という小さな規模です。運営しているのは、兼岩勲さん・夕美子さんご夫妻。3人のお子様もときどき宿の手伝いをすることもあるというファミリー経営です。旅好きだったご夫妻は、15年以上も前から「ゲストハウスをやりたい」と構想し続けていましたが、勲さんの会社退職を機に遂に計画実行に向けてアクション開始。現在の宿がある蔵前の一軒家を購入し、できる範囲は自分たちでDIYをして、このゲストハウスをつくりあげました。
 宿の内部は、以前中学の美術教師だった経歴を持つ夕美子さんのセンスとワザが光るかわいいインテリアで彩られています。大きいサイズで作られた頑丈な二段ベッドや、タイル使いがかわいい共有リビングにある小さなキッチン、遊び心を感じる廊下や階段の小さな仕掛けなど、ほどよいハンドメイド感を残しながらもプロフェッショナルな仕事を感じさせる空間です。  

頑丈なつくりで上段へのはしごも上りやすい女性用ドミトリー
頑丈なつくりで上段へのはしごも上りやすい女性用ドミトリー

枕元の小物置きスペースなど工夫が詰まったドミトリーベッド
枕元の小物置きスペースなど工夫が詰まったドミトリーベッド

かわいいタイルや洗面台などすべて弓美子さんのセンスでセレクト
かわいいタイルや洗面台などすべて弓美子さんのセンスでセレクト

ラウンジにあるキッチンは小さいけれど使い勝手は抜群
ラウンジにあるキッチンは小さいけれど使い勝手は抜群


1階の共有リビングのゆったりくつろげる雰囲気が心地よい

 ここの一番の特徴は、共有ラウンジの雰囲気のよさ。ソファがあってピアノがあって人がいて。なんというか、親しい友だちの家みたいにものすごく落ち着くことができるんです。特に用事がなくても「ちょっとコーヒーでも飲みながらのんびり本でも読もうかな」と思えてきます。それはその場のエネルギーが、温かみを感じるインテリアだけではなく、ふだんリビングの一画で仕事をされているオーナーご夫妻の人柄によって、よりあたたかみを増しているからなのかもしれません。
 東京都内で泊まりたいとき。わたしにとっての東京は旅行ではなく、仕事絡みのことも多いです。予定も多く夜は遅くて朝は早くチェックアウト。そんなときはあまりこの宿を利用しません。なぜならここではゆったりくつろぐ時間が欲しいから。
 近くにある24時間オープンしているスーパーで食材を買って軽い夜食や朝食をつくったり、ラウンジで自由に飲めるお茶やコーヒーをいただきながら、その日の旅人となんとはなしにお話したりするその時間こそがこの宿の醍醐味です。東京での宿はインバウンド(外国人観光客)ばかりなんじゃ?と思われる人もいるかもしれませんが、ここでは私の体験する限り、利用率は日本人と半々くらいでしょうか。

天井が高くゆったりくつろげる共有ラウンジ
天井が高くゆったりくつろげる共有ラウンジ

クッションの並びにもセンスを感じる
クッションの並びにもセンスを感じる


ときには悩み相談まで!? 泊まる理由は観光だけじゃない

兼岩弓美子さん・勲さんご夫妻
兼岩弓美子さん・勲さんご夫妻

 そういえば、こんなこともありました。宿泊していたある日の夜、わたしとオーナーの兼岩夫妻を交えて、なんとなくラウンジにいたみんなでポツポツと身の上話のような話をしていたときのこと。急に隣に座ってスマホをいじっていた女性が、「ちょっと相談に乗ってもらいたいんです」と話しかけてきました。聞くと、「今住んでいる自分の家から逃げてきた」と言うのです!
 家にいるとかなり困った状況になっていて、それをこれから回避するにはどうしたらいいか?と、急に真剣な悩み相談が始まりました。全く赤の他人、名前も知らない旅人に、いや、そういう関係ない人だからこそ、話せることもある。これもきっとこのラウンジの持つあたたかな雰囲気だったから起こった出来事なのだろうな、と感じたのでした。


東京の小さなゲストハウスを繋ぐプロジェクトもスタート

2017年台北でのイベントの様子
2017年台北でのイベントの様子

 東京都内でも、少し探してみるとこうした小さなゲストハウスを見つけることができます。ゲストハウスはもともと自分の旅好きからスタートしたビジネスとして運営する人が多かったためか、宿同士がライバルではなく協力しあえるネットワークを持っているのも特徴のひとつ。その動きのひとつとして、この宿を含む東京の小さなゲストハウスの取り組みとして、来来 small guest house(らいらいスモールゲストハウス)というプロジェクトが生まれました。
 これは旅人と東京とゲストハウスの持つ魅力を分かち合い、かつゲストハウス同士もつなげていきたいという想いから生まれたプロジェクトで、現在、東京ひかりゲストハウスをはじめ、サトウサンズレスト(三ノ輪)、328hostel & lounge(羽田)、墨田長屋(曳舟)、ゲストハウス扇子(羽田)の5店舗が関わり、情報共有やイベントなどを行っています。
 この来来Small guest house プロジェクトが昨年スタートさせた取り組みが今年はさらにスケールアップ、全国各地の小規模ゲストハウスの有志も加わり、12月には合同で台湾・台北のゲストハウスFlip Flop Hostel-Gardenで日台それぞれのインバウンド観光を盛り上げるイベントを行う予定もあるそう。


非日常気分を味わいにゲストハウスをつかってみよう

ゲストハウス入口で出迎えるかわいらしいロゴデザイン
ゲストハウス入口で出迎えるかわいらしいロゴデザイン

 関東近郊にお住まいの方は、東京都内に泊まるなんてなかなか体験しないシチュエーションかもしれません。けれど、旅の良し悪しは距離で決まるわけではありません。たとえ家の近所でも、心の持ちようによって非日常はいつでも生まれ、旅気分を味わうことができます。また、東京=都会・冷たいイメージという固定概念も、ここではふわっと溶けていきます。
 泊まる理由はなんでもいい。旅でも、出張でも、理由なんてなくても。小さく暖かいひかりが灯るように、ゲスト同士、また、オーナーの兼岩さんファミリーとの交流を通じて、東京にあたらしいホームができる。そんな体験ができるのが東京ひかりゲストハウスです。機会があればぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。


東京ひかりゲストハウス
〒111-0051 東京都台東区蔵前2-1-29
TEL 03-5829-4694 (8:00ー12:00、16:00ー23:00)
https://tokyohikari-gh.jimdo.com/

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