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「エコアナウンサーの視点から」バックナンバー

0012024.09.10UP今年で30歳のRびんを知ってワクワク

 みなさん、ようこそ!エコアナウンサーの櫻田彩子です。これからみなさんと、どんなお話ができるかとてもワクワクしています。どうぞよろしくお願い致します。初回は先日、司会を担当した「びん再使用ネットワーク設立30周年記念イベント」で学んだことを共有いたします。
 知っているようで知らない?!「Rびん」についてのお話です。知れば知るほどオモシロイ、使いたくなる…それがRびんなんです。


Rびんとは

 Rびんの紹介のまえに…そもそも、びんにはリユースびんとワンウェイびんがあることをご存じでしょうか。繰り返し使うものがリユースびん、一回使ったら破砕してリサイクルするものがワンウェイびんです。びんはリサイクルに適した素材で、地球の地殻と同じ、けい砂、ソーダ灰、石灰石、カレット(ガラス製品をくだいたもの)など天然素材を原料に作られており、溶かして何度でもガラスびんにリサイクルすることができます。
 びん再使用ネットワークのホームページによると「牛乳びんやビールびんなど、再使用できるガラスびんのことを“リユースびん”」といい、洗ってなんども使用できるびんのことです。リユースびんは、リターナブルびんや活(生)きびん、と呼ばれることもあります。
 そのなかで、ガラスびん容器の形を統一し、回収・洗浄・選別という再使用に不可欠な作業の効率を高めたリユースびんを、日本ガラスびん協会が「Rびん」と認定。びんの底や肩部にRマークが刻印されたものをRびんと呼びます。
 規格が統一されRマークが刻印されてから今年で30年です。Rマークのついたびん、あなたもどこかで見たことがあるのではないでしょうか。

Rびん

Rびん(注1)


 ライフサイクルアセスメント(製品の原料採取から製品化、廃棄やリサイクルにいたる製品の一生を定量的に評価する)の点から見ても、びんを繰り返して使うほど環境負荷を減らすことができます。
 さらにRびんには、「超軽量Rびん」というものがあり、実際に持ってみますと、「軽っ」という感じで、これまでの私の身体が覚えているびんの重さの感覚とくらべて「あれっ」と思いました。それもそのはず、標準Rびんより40%軽量化しているそうです。びんの商品は重くて買いにくい…と思っている方には朗報です。また以前、洗びん(びんを洗う)事業を行う企業のRびんの洗浄工程を見学しましたが、まるで食品製造レーンのようにとても清潔な管理がされていることに驚きました。安心・安全はもちろん、使いやすさにも工夫がされています。
 2024年の最新の研究で、超軽量Rびんとワンウェイびんの使用による環境負荷削減効果をくらべた結果が公表されています。超軽量Rびんのリユースにより、新しいびんの製造量が減るため、GHG(温室効果ガス)の排出量も削減します。一方で、リユースによってびんの回収が必要となり、輸送の際に排出されるGHGが生じますが、全体では輸送によるGHG増加を上回る削減効果があることが確認されました(注2)

びんの規格統一

びんの規格統一(注1)


リユースびんとRびんの歴史

 3000年以上前にメソポタミア文明から発祥し、使われていたのではないかといわれるガラスの容器。日本でガラスびんが一般に使われるようになったのは明治時代になってからのようで、それ以前の江戸時代には陶器の「とっくり」が液体を持ち運ぶ容器として使われていたそうです。
 1870年ごろの明治時代には、イギリス、ドイツ、アメリカなどからの洋酒が輸入され、空きびんをリユースするようになり、その後、初めて国産のビールびんや牛乳びんが作られます。
 1900年代は目薬びんが良く出回っていたそうです。今考えるとおもしろいですね。このころ、リユースびんの原点と言える一升びんのお酒が登場します。そして、調味料やお酒、医薬品にもびんが使われ、自動でびんを作る機械が導入され、びんの多様化と大量生産がはじまります。
 高度成長期となった70年代以降は、一度使ってリサイクルされるワンウェイびんが増え、カレットの需要も増えたようです。カレットはガラスのかけらのことで、ガラスびんを製造する際に使われる原料です。新しいびんを製造する時にカレットを使うことで天然資源もエネルギーも少なくてすみます。
 びんメーカーや酒販売店と行政が協力してリサイクルに取り組み、97年に容器包装リサイクル法の施行により、あきびんの分別収集・リサイクルの取り組みが進み、びんのリサイクルは家庭であたり前になります。
 2000年にはいくつもの生協団体で構成された「びん再使用ネットワーク」が超軽量Rびんを開発します。
 順調に思われるびんの利用ですが、ペットボトルの普及などでびんの回収は右肩下がり。そこにコロナ禍の行動制限で飲食店などでのびんの利用も減り、燃料の高騰も加わり、びんを作る工場が閉鎖されたこともあり、昨年には「一升びんが足りない」ということがニュースにもなっていました。
 そこで酒造メーカーによってはポイント制でびんを持ってきてもらうリユースを始めたところもあります。


Rびんは社会課題に貢献

 二酸化炭素などの温室効果ガスの排出によって引き起こされている地球温暖化。観測史上最も暑かった昨年に続き、今年も猛暑が続いています。猛暑や豪雨などの気候災害が日本でも頻発し、もはや「異常」ではなく「日常」に感じられている方も多いと思います。このような中、いかに二酸化炭素の排出を減らし、脱炭素を2050年までに達成するか世界中で取り組みが急がれています。
 エネルギーの二酸化炭素の排出を減らすことはもちろん、私たちの生活を営む上で私たちができる二酸化炭素の削減も大切です。ごみや廃棄物を燃やすことから排出される二酸化炭素も減らすことで脱炭素社会は実現します。食品などのプラスチック包装や生活用品のサーキュラーエコノミーの取り組みはこれからが本番です。
 また、日本のごみ、一般廃棄物の最終処分場の残余年数は全国平均で23.4年ですから、このままいくと2047年ごろには私たちの家からごみを出せなくなる、なんてことになりかねません。ごみ問題を考えることは、住み続けられる街を作り次世代につなげることに貢献できます。
 こうして考えていくと、①ごみを減らす(リデュースReduce)、②捨てずにまた使う(リユースReuse)、それでもごみが出てしまったら③もう一度資源として使う(Recycle)の順番と意味がよく分かってきます。
 そこで…そうです。Rびんが実力を発揮するときです。

最終処分場の残余容量および残余年数の推移(一般廃棄物)

最終処分場の残余容量および残余年数の推移(一般廃棄物)(注3)


使ってみる?Rびん

 みなさん、ここまでお読みいただいて、Rびん、リユースびん使ってみたいな、と思われたでしょうか。
 びんは密封性や保存性にすぐれ、素材も地球の組成と同じ天然素材です。持続可能な今とこれからをつくるサーキュラーエコノミーにぴったりです。
 Rびんのリユースシステムを構築しているのは、全国の酒造メーカーや、生活クラブ連合会をはじめとした生協などです。Rびんやリユースびんを使っている商品を選び、自分もびんを返却すれば、だれでもサーキュラーエコノミーに参加できます。私が子どもだった昭和時代には、酒屋さんにびんを持っていくと何円かもらえたものです。
 どうしたらもっとびんの再利用が進むでしょうか。ぜひ、アイディアを考えてみてください。
 びん再使用ネットワークのREUSE BOTTLE HANDBOOKには「リユースびんはみんなの共有物、財産」と記されています。なんどもみんなで使うリユースびんは確かに、誰か一人のものではなく、みんなの財産ですね。あなたから私へ、私からあなたへ。ていねいにあつかって便利を届けられるプレゼント、そう考えるとワクワクします。


注釈

(注1)びん再使用ネットワーク
https://binnet.org/r_bin/
(注2)びん再使用ネットワーク設立30周年記念イベント【資料3】京都大学環境安全保健機構環境管理部門による「Rびんリユースの環境負荷低減効果に関する研究」
(注3)令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r06/pdf/full.pdf

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