メインコンテンツ ここから

「続・現代狩猟生活」バックナンバー

0032015.03.17UP「狩猟ブーム」で猟師は増える? 狩猟者数の動向

「狩猟ブーム」で狩猟者数は増えている?

 最近、狩猟を始めた若者がテレビや新聞などのマスコミで取り上げられる機会が増えています。また、女性狩猟者の増加も注目されています。大日本猟友会は実在の女性狩猟者をモデルに「目指せ!狩りガール」という連載企画サイトを開設し、女性へのPRに積極的です。また、北海道では「TWIN(The Women in Nature-shoot&eat-)」という女性狩猟者の団体も誕生しています。ニュースやネットだけを見ていると、ずいぶんと狩猟が若者や女性の間で流行っているような印象を受けるかもしれません。
 しかし、実際の現場ではやはり狩猟者の高齢化はまだまだ深刻です。若者が増えているのは都市部や一部の「便利な田舎」がほとんどで、地方の猟友会では「若いやつなんて数えるほどだ」「狩りガールなんて見たことない」というのも現実のようです。僕の周辺を見ても、狩猟に関心を持つ若者が増えている印象もありますが、狩猟免許を取って、実際に猟をしている人は少数ですし、何年か続けても大学を卒業したり、仕事の都合などでやめていったりする人もいます。
 山を歩くと、下草は食べ尽くされ、いたるところで樹皮がかじられています。増え過ぎたシカがどんどんこれまで食べなかった植物まで食べ始めています。幼木もほとんど食べ尽くされ、森林の更新もままならない状態です。表土が露出した山肌は大雨のたびに崩れていきます。この10年だけを見ても、山の雰囲気は随分変わりました。確実にシカは増え続けているというのが僕の印象です。
 今猟期、解禁日は土曜日でした。僕が猟を始めた15年ほど前なら猟師たちがこぞって山に入り、あちこちで銃声が聞こえたものでした。しかし、その日、僕は一日中山のなかでわなを仕掛けていましたが、一発の銃声を聞くこともありませんでした。
 全体としての狩猟者数が持ち直しているようには思えない。これが現場での実感です。

『目指せ!狩りガール』(大日本猟友会)
『目指せ!狩りガール』(大日本猟友会)

TWIN(The Women In Nature -shoot & eat-)公式ホームページ
TWIN(The Women In Nature -shoot & eat-)公式ホームページ


狩猟者数の動向を把握するために

種別狩猟免許取得者数(環境省)
種別狩猟免許取得者数(環境省)

 現在の狩猟者数を把握するのに一番良く使われるのは、環境省の狩猟免許所持者数のグラフです。数年前のデータまでしかわからないのが難点ですが、都道府県ごとの集計方法の違いなどもあり、環境省の方でも苦労されているようです。
 このグラフを見る際に注意しておくことがいくつかあります。まずは、あくまでも狩猟免許を持っている人の数なので、ペーパー免許所持者も含まれるという点。実際に猟をしている人の数はもっと少ないということです。また、人によっては銃猟とわな猟の両方の免許を所持している人がいますが、この場合2人分にカウントされています。僕もわな猟と網猟の2つの免許を持っているので、2012年の18万1千人のうちの2人分が僕ということになります。
 このグラフを見ると、2007年にいったん狩猟者数が持ち直しているようにみえますが、これは、網・わな猟免許(旧甲種免許)が網免許とわな免許に分かれた際に両方持つことになった人をダブルカウントしたためです。
 実際に猟をしている人の数を把握するためには、毎年必ず行われる都道府県ごとの狩猟者登録人数を確認するほうが確実です。環境省の「狩猟者登録証交付状況」の2012年度によると全国で13万人ほどの人が狩猟者登録を行っています。ただ、複数の都道府県で登録をする人もそれなりにいるので、そのなかの「県内者」の合計である約11万5千人がその実数に近いでしょう。この場合も、複数の免許での登録はやはりダブルカウントされていますので、その分を勘案すると現在の日本の狩猟者の実際の数はどうやら10万人を既に割り込んでいると判断するのが妥当なのではないでしょうか。

野生動物の増加と「猟師の減少」の因果関係

 「猟師が減ったから野生動物が増えた」とよく言われます。その一方で、「毎年シカもイノシシも捕獲頭数が増えているんだから、猟師の減少は関係ない。猟師のがんばり以上に野生動物が増えているだけだ」という意見もあります。どちらが正しいのでしょうか?これも数字だけを見ていては、なかなか理解できません。
 戦後、シカやイノシシなどの大型獣が少ない時代は、大物猟をする人は少数でした。多くの狩猟者はキジやカモ、ノウサギなどをその狩猟対象としていました。それが近年、シカ・イノシシの増加に伴って、大物猟に転向する人が続出したのです。なので、「猟師が減っているのに捕獲数は増えている」のではなく、「猟師のなかで大物猟をする人が増えたため、捕獲数が増えている」と認識するのが正しいわけです。当然、獲物の数自体が増えているので、もともと大物猟をやっていた人たちの捕獲数も増加しています。また、効率的な箱ワナ猟の普及も捕獲頭数の増加に影響しています。
 シカやイノシシの生息域の拡大も関係しています。先日環境省の「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」の基調講演のため訪れた石川県では、1993年以前にはイノシシの捕獲数は年間10頭程度しか報告されていなかったそうです。それが2010年には2千頭を超えています。地元の猟友会の方に聞くと、かつては一部の人がクマを狙うか京都や福井まで遠征してイノシシ猟をしていたくらいで、ほとんどの狩猟者は地元で鳥やノウサギ、を狙っていたとのことでした。それが今では多くの人が大物猟に従事しています。
 その一方で、山間部を中心に狩猟者のいなくなってしまった集落なども全国に多数あります。そういったエリアでは野生動物はどんどん生息数を増やし、結果としてそれが他地域へも移動し、生息域の拡大につながっています。なので、「猟師が減ったから野生動物が増えた」というのも場所によっては正しい場合もあるのです。

狩猟及び有害捕獲等によるイノシシ捕獲数の推移(環境省)
狩猟及び有害捕獲等によるイノシシ捕獲数の推移(環境省)

狩猟及び有害捕獲等によるシカ捕獲数の推移(環境省))
狩猟及び有害捕獲等によるシカ捕獲数の推移(環境省)


狩猟者の激減期を迎え、継続的な取り組みが必要

年齢別狩猟免許取得者数(環境省)
年齢別狩猟免許取得者数(環境省)

 2012年度の狩猟免許所持者18万1千人のうち、60歳以上が11万7千人と全体の65%を占めています。このなかの多くの人は20年後、狩猟の世界にはとどまっていないでしょう。今でも80代、90代でも現役で頑張っているベテラン狩猟者は各地にいますが少数です。
 つまり、狩猟免許取得者の増加率が現状のままならば、20年後には狩猟免許所持者数は、10万人を切ることは間違いなく、実猟を行う狩猟者の数は5万人程度となると推測されます。
 一方、2012年度のイノシシの捕獲頭数は狩猟と有害駆除あわせて42万7千頭、シカが46万6千頭。環境省はこのままの捕獲ペースが維持されたとしてもシカ・イノシシの生息数は10年後には倍増すると試算しており、いよいよ激減する狩猟者だけでは対応しきれない時代がやってくるのは間違いありません。代わって、株式会社や法人への有害駆除や管理捕獲の委託が検討されていますが、経験を積んだ狩猟者が従事しなければなかなか効果はあがらないでしょう。
 一過性のブームに終わらせるのではなく、狩猟に興味をもった人が継続して猟を続けられるような取り組みがいま求められているのではないでしょうか。


このレポートは役に立ちましたか?→

役に立った

役に立った:14

このレポートへの感想

統計グラフコンクールのテーマにさせて頂きます。
(2017.02.06)

釣り(漁)と狩猟は、本当に近いものだと思います。
生命を狩るという、本質的なところから、免許がいるかどうかというところまで。

趣味としての釣りは、比較的安価に始められる上に、許認可も必要なく、ハードルが低いといえますね。
一方で、狩猟は、初期費用かかかる上に、銃の所持許可などで規制が多くあります。

一方で、その必要性も異なり、今や狩猟では、スポーツというよりも、獣害駆除にシフトしつつあります。
そう考えると、有資格のボランティア的な性格が強いと思います。

ボランティアとして狩猟を位置づけるなら、道具はともかく、許認可については、負担感を緩和すべきと思います。
新規参入が容易なように、手続きを簡略化すべきだと思います。
一方で、銃の規制は、しっかりと強化すべき。
今のような、中途半端な許可の出し渋りのようなものでなくて、対象者をきちっと絞る感じで。
(2015.05.31)

趣味なのか、実益なのか、安寧秩序の維持なのかといった視点からの議論も必要かと思います。

先の方が書いておられる中にもある「釣り」と比較すると、趣味的な視点では、狩猟を趣味としてやるには、費用や手間などの問題が主な論点になるでしょう。
実益としては、企業の参加など。そして、安寧秩序の点からは、有害鳥獣の駆除といった観点。
もちろん、釣りからも、ブラックバスなどのリリース禁止などといった点もあり、すべてを別々に議論できないのも事実。
こうした問題を、論点を整理しつつ議論を深めていくべきでしょうね。
(2015.05.30)

全ての感想を表示

このレポートへの感想をお送りください。
投稿いただいた感想は事務局チェック後に掲載されます。

ニックネーム
感想
 
送信する入力内容クリア

前のページへ戻る

【PR】

 

ログイン

ゲストさん、

[新規登録] [パスワードを確認]

エコナビアクションメニュー

【PR】

  • 東京環境工科専門学校 コラム連載中!