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「わが社のエコレポ」バックナンバー

0022013.01.08UP“エコの価値”を交換するためのプラットフォームをつくり、日本の森と水と空気を守る-EVI推進協議会の取り組み-

100社・150人が参加した、マッチングイベントEVI推進協議会

2012年11月30日に開催された、EVI推進協議会主催の「オフセット・クレジット(J-VER)マッチングイベント」で熱弁を振るう、EVI推進協議会の加藤孝一さん
2012年11月30日に開催された、EVI推進協議会主催の「オフセット・クレジット(J-VER)マッチングイベント」で熱弁を振るう、EVI推進協議会の加藤孝一さん

 去る11月30日(金)、丸の内トラストタワー(東京都千代田区丸の内)N館3階の大会議室で、EVI推進協議会主催の「オフセット・クレジット(J-VER)マッチングイベント2012」が開催された。参加者は、100社から総勢150名ほど。森林整備事業によって産出したオフセット・クレジットを預託する森林関係者と、クレジットの活用を検討する企業担当者の双方から、EVIに対する期待の眼差しが注がれた。
 「参加者からは、『EVIの仕組みやその活用の仕方がよくわかった』など概ね高い評価をいただきました。カーボンオフセットやクレジットの利用に対する関心の高さはひしひしと感じています。その受け皿として、EVIをより使いやすいプラットフォームにしていかなくてはならないと思っています」
 EVI推進協会議事務局の加藤孝一さんは、今回のマッチングイベントの手応えとEVIの使命についてそう語る。

 2010年3月に発足したEVI推進協議会は、環境省のマッチング支援事業に採択されたもので、三菱UFJリース株式会社とカルビー株式会社カルネコ事業部が事務局を務める。その事業内容は、同協議会の発足に先立つ同年2月にカルビー株式会社カルネコ事業部が開発したウェブ・プラットフォームシステム「EVI」の普及推進によるJ-VERクレジットの流通だ。活動の理念は、「日本の森と水と空気を守る」こと。名称の"EVI"は、"Eco Value Interchange"の略で、文字通り“エコの価値”の交換・流通を進めることで日本の森林を守っていこうというわけだ。
 現在、EVIが扱う“エコの価値”は、環境省のJ-VER制度で認証されたオフセット・クレジット(J-VERクレジット)が主体になっている。国内各地の森林事業者等が間伐や植林などの整備事業を通じて生み出したJ-VERクレジットをEVIが預かり、クレジットの利用を検討する企業等はそれらの中から思い入れや関わりのある地域のクレジットを、EVIのシステムを通じて必要な分だけ手軽に購入できる、それがEVIのプラットフォーム機能だ。すでに国内40箇所の森林から総量5,711トンのJ-VERクレジット預託があり、22の参加企業がクレジットの活用を開始している。森林のカバー率では都道府県ベースで65%にもなる(2012年11月現在)。
 クレジットの預託には手数料を一切取っていないし、クレジットが売れても仲介料等を取ってはいない。一方、クレジットの利用を検討する企業からはこれまで年間12万円の参加フィーを取っていたが、この日のマッチングイベントの席上、それもゼロにすることが発表された。クレジットを創出して活用してもらいたい森林側も、クレジットを購入して自社の事業等のカーボンオフセットを進めたい企業側も、一切の手数料なしで登録・利用ができることになったわけだ。
 「EVIのプラットフォームを事業として成り立たせることは考えていません。そうでないとインフラをつくっていくことなんてできません。今、各地の森林からクレジット預託の引き合わせが続々と届くようになってきています。そう遠くない将来に、日本の全都道府県をカバーできるようになると思っています。利用を検討する企業さんも、全国各地の森から応援したい森を自由に選べるようになって、活用しやすくなると思います。それと同時に、事務手続きの簡略化と効率化を実現するようなシステム設計にも着手しています」
 森林事業者がクレジットを預けてくれるのは、預けたクレジットが利用してもらえるという期待や信頼があるからだ。それらの思いにきちんと応えていけるようなシステムを提供したいと加藤さんは言う。

安売りからの脱却をめざして、購買動機に訴えるプロモーションを展開

 ウェブ・プラットフォームシステム「EVI」を開発したのは前述の通り、カルビー株式会社カルネコ事業部。加藤さんの本業での肩書は、その事業部長だ。
 カルネコ事業部の本来業務は、POP(店頭販促)などの販促ツールをオンデマンドで受注生産・配送するシステムの運用だ。もともとカルビーの商品を小売店で販売する際、値引き競争に代わる手段として、商品の価値を伝えるメッセージ型のプロモーション(販売戦略)を展開しようと立ち上げたのがはじまりだった。
 安売りによる価格訴求型のプロモーションでは、大量販売によって出荷額は増大する。その反面、安売りを実現するために小売りは卸に値引きを交渉し、卸はメーカーにリベート(販売奨励金)を要求する。結果、誰にとっても得にならない構造を作り出していた。そうした状況が続けば、メーカーとしても利益を確保するために商品の内容量を減らすなど対策を講じることになる。最終的に損することになるのは、商品を購入する消費者というわけだ。
 値引きをしなくても顧客の支持を得られるような売り場づくりができれば、安売り頼みの悪循環を打破して、小売店も卸もメーカーも利幅を得られ、かつ消費者にとっても満足のいく商品の提供が可能になる──そんな発想だった。
 背景には、アメリカで発展した「プライマリー・ベネフィット(決定的購買動機)」という考えがあった。“顧客には商品を買う決定的な理由が一つある”という考え方で、そうした顧客の購買動機を発見して商品の開発・販促を進めることがすべての出発点になるというものだ。独自に実施した購買動機調査では、カルビーの商品にとって「価格」は購買動機の第9位に過ぎないとの結果が出ている。むしろ、「食味」や「食感・歯ごたえ」「素材の味」などに対する評価がもっとも高く、また「酒やビールのつまみに合う」「食べやすい形・大きさ」なども「価格」より上位に入った。

 ただ、同業他社は安売りによる売上増をめざして営業をかけているから、具体的で説得力のある提案をしていかないと太刀打ちできない。そのため、店舗ごとの地域特性や客層に合わせた販促ツールの提供を可能にするためのインフラを整備しようというのが、カルネコのオンデマンド受注生産・配送システムだ。
 カルビーは、四半期ごとに50企画ほどのプロモーションアイデアを取り揃えた営業用カタログをパッケージ化して各店舗に提供する。店舗側が、必要なタイミングで必要とする販促ツールを必要なだけ選んで発注すると、最短4日で届くというシステムだ。最小単位は1個から発注可能で、全国どこへでもカルビーの負担で届けられる。パッケージに盛り込まれるプロモーション企画は、全国各地の成功事例、季節や祭事に応じたアイデアなど。これらの企画は現場からの受注エントリーによって全国レベルの受注状況が逐次集計されるから、人気の高い企画なども見えてきて、他地域での展開や次期カタログへのフィードバックとして活かされていく。

四半期ごとに新しい50の企画が入った、カルネコのプロモーションパック
四半期ごとに新しい50の企画が入った、カルネコのプロモーションパック

 もう一つ、副次的な効果も生まれている。大量に見込み生産したメーカー押しつけの販促ツールを各店舗にばらまいてきた従来の一律型プロモーションでは、各店舗のニーズに合った販促ツールの提供もできなかったし、使われないまま廃棄されたり逆に不足したりと適量を届けるのが難しかった。オンデマンドの受注生産にすることで、廃棄や欠品がなくなり、結果として年間数億円かかっていた販促資材コストの大幅削減につながったのだ。

CFPキャンペーンをきっかけに、EVIのインフラ整備を構想

CFPのPR事業として実施した『あなたが選ぶ! 森が活きる!』キャンペーン
CFPのPR事業として実施した『あなたが選ぶ! 森が活きる!』キャンペーン

CO2排出の低い商品の価格受容性(消費者アンケートより)
CO2排出の低い商品の価格受容性(消費者アンケートより)

 EVIを構想する直接のきっかけになったのは、2010年8月?9月にかけて実施した、カーボンフットプリント(CFP)を紹介する環境貢献型プロモーション『あなたが選ぶ! 森が活きる!』キャンペーンの経験だった。
 CFPとは、原材料調達から廃棄・リサイクルまでのライフサイクルを通じて排出される商品1袋当たりの温室効果ガスをCO2量に換算して、パッケージに表示する制度。メーカーは、表示した値をベンチマークとして、各行程の効率化や最適化を図りながら、値(=CO2排出量)を小さくするための取り組みにつなげる。2008年に政府が閣議決定した「低炭素社会づくり行動計画」の中で示されたCO2の“見える化”の具体的手法の一つとして、経産省が関係4省と連携して実施した制度化試行事業を受けて、製菓業界でもCFPの算定試行事業の取り組みがはじまっていた。その一環として実施したのが先のCFPキャンペーンだった。

 3企業の4商品で実施したこのキャンペーンは、CFP制度のPRをしながらその効果を検証するのと同時に、消費者が購入した商品に付いているCFPマークが応募券となって森林保護事業の支援につなげるというもの。包装材から切り取ったCFPマークを応募用紙に貼り付け、全国4か所の森林から支援したい森を選んで、応募してもらう。それによって、商品の購買行為と環境保全の行動とを結びつけようという意欲的な取り組みだった。応募用紙には、応募理由やキャンペーンに参加して感じたこと、CO2排出の低い環境配慮型商品の価格に対する意見といったアンケート項目を設定し、消費者の環境意識や購買動機に対するリサーチも行った。
 キャンペーンの結果、対象商品の売り上げは前年比で顕著な伸びを見せたと同時に、アンケートの結果から消費者の環境意識の高さや環境貢献型キャンペーンへの参加意欲などが確認でき、良質なプロモーション企画が購買動機を喚起する可能性と期待感が浮き彫りにされた。

 成功裏に終わったCFPキャンペーンだったが、その過程で見えてきた問題点もあった。
 「良質なプロモーションが提供できれば、普段の買い物を通じた環境貢献に協力したいと願う消費者が少なからずいることはCFPキャンペーンのアンケート結果から見えてきました。これに対して、消費者の購買動機につながるなら環境貢献型のプロモーションを展開したいという企業側のニーズもあります。ただ、キャンペーンごとに奥深い森に出かけてクレジット購入の個別交渉をしていくのでは手間もコストもかかってなかなか進みません。一方、クレジット購入の相談で訪れた森では、がんばって認証を受けて取得したクレジットが本当に売れるようになるのかという不安や悩みを抱えている現実を垣間見ることにもなりました。それぞれのニーズは重なり合っているんです。ただ、三者の事情がうまくマッチしていない現状があるわけです。だったら、それらをうまくマッチングさせるプラットフォームさえできれば、三者それぞれにとって喜ばしい関係を構築することができると思ったのです」
 それが、EVIの構想へとつながっていったわけだ。
 この構図は、オンデマンドの受注生産・配送システムというインフラを構築して、顧客の購入動機に合わせた販促ツールを必要な時に必要なだけ提供するというカルネコの事業化プロセスと実によく似ている。逆に言うとカルネコの事業化の成功体験がEVIの発想を生み出したといえるのかもしれない。
 「私がこれまで出会ってきた中で直面してきたことが、すべてつながって、EVIという形に誘導してくれたのです。一つ一つの問題に対するソリューションを考えていったら、自然とこうなっていったわけです」
 購買動機に訴える売り場づくりの成功体験とオンデマンドPOPの企画・生産・配送のインフラ整備が環境貢献型プロモーションの発想を生み、CFPキャンペーンを通じて得た成果と課題が、EVIの構想へと結びついていったのは、自然な流れだったと加藤さんはいう。

マッチングイベントでの事例報告から垣間見えた、EVIを活用したクレジット流通の可能性

日本橋・高島屋の店頭を飾った、南アルプス市産の「カーボンオフセット付きサクランボ」

日本橋・高島屋の店頭を飾った、南アルプス市産の「カーボンオフセット付きサクランボ」
日本橋・高島屋の店頭を飾った、南アルプス市産の「カーボンオフセット付きサクランボ」

 冒頭に紹介したマッチングイベントでは、EVIが立ち上がってからの1年8ヶ月の間に出会ってきた数々の事例について、中心的に取り組んできた当事者本人から話してもらうという形で進んでいった。これらの成功事例は、EVIの活用の可能性を雄弁に物語る。以下、簡単ながらそのエッセンスを紹介する。

 生花の卸売や輸入切花の販売など園芸資材を扱うアートグリーン株式会社では、胡蝶蘭1鉢の売上に対して10円をEVIを通じたクレジット購入に充てている。年間購入金額自体はそれほど大きなものではないというが、同業他社に先駆けた環境への取り組みは顧客にも好評を博し、新規営業で訪問したときなどにもスムーズな取引にもつながっているという。贈答品として扱われることの多い胡蝶蘭を購入することで、自然と環境への貢献につながっていくという付加価値が顧客の興味や共感を呼んでいるわけだ。
 さらに、EVIへの参加がきっかけになって、社員の環境意識の向上につながった効果も大きいと同社の社長、田中豊さんは言う。
 「うちの社員の半分ほどは、お花のことが大好きだとか、お花を扱いたいという動機で入社してきています。そうすると、“人生、花しかない”という人たちも少なくありません。そんな世の中のことにも疎い人たちなんですが、日々扱っている胡蝶蘭をラッピングしてお客様のところに届けていく、その裏側で日本の森を勝手に守っているんだよ、ぼくたちは──という話をすると、すごく反応がよくて、こうした取り組みに対する意識を社員の皆が持ってくれています」
 ごくごく小さな取り組みからでも始められるよさがEVIにはあると強調する田中さんだ。

 山梨県南アルプス市の事例は、カーボンオフセット付き農産物の開発・販売という、より本格的な取り組みだ。
 同市は、南アルプスの山麓に広がる豊かな自然が特徴の地域。モモやスモモなどの果樹やトマトなどのハウス野菜、花卉などの農産物を基幹産業とする。これらの生産に必要なエネルギーを、豊かな自然を活用した自然エネルギーでまかなうことで、自然にやさしい農業生産に転換していこうというのが取り組みのきっかけだった。
 最初の取り組みは、果樹園から出る剪定枝などを原料にした木質ペレットを生産して、ハウストマトの加温用ボイラーの燃料を重油から転換するというもの。「エコトマト」と呼んで普及をめざしていく中で、より明確な環境基準を導入しようと、J-VERクレジット制度の活用について検討を開始した。当初は、高知県の森林から産出したクレジットを購入してオフセットしていたが、南アルプスの豊かな自然を生かした独自のクレジットを生み出せないかと検討した結果、市内に設置した小水力発電の自家消費分によるCO2削減をJ-VERクレジットとして認証取得し、これを活用した「カーボンオフセット付きサクランボ」の商品化に成功。カルネコによるプロモーション協力も効奏して、東京日本橋の高島屋で取り扱ってもらえることとなり、良質で付加価値の高い商品として好評を博した。2012年12月からは対象商品を増やして、取り組みを拡大していくという。
 同市の取り組みでは、クレジットの創出から活用まで自己完結した取り組みが実現しているが、クレジットの創出ができない他地域でも、EVIのプラットフォームを活用することで応用することができるわけだ。活用するクレジットは、幅広い選択肢の中から最適なものを選択することができるから、例えば同じ県内だったり近い地域のクレジットだったりを選んで購入し、取り組みに一貫性を持たせることも可能になる。

こだわりのアイスクリーム「MOW」と、自然保護キャンペーンの特設サイト

こだわりのアイスクリーム「MOW」と、自然保護キャンペーンの特設サイト
こだわりのアイスクリーム「MOW」と、自然保護キャンペーンの特設サイト

 森永乳業の事例は、こだわりのアイス商品を売り出すためのプロモーションの一環として実施している取り組みを紹介するものだ。必要最低限の原料に抑えることで雑味がなく素材のやさしい味わいが楽しめると謳ったこの商品では、“おいしい素材は健全な自然環境から育まれる”をコンセプトに、自然保護キャンペーンに取り組んできた。
 当初は、世界各国で自然保護運動を展開する環境NGOのWWFの活動を支援するという形でスタートしている。WWFとのタイアップでは、環境保護に貢献している企業からの支援でなければ受けないとの条件が付された。原料や包装資材をより一層の環境配慮型にするため、全社を挙げたクロスファンクションチームを立ち上げて研究・検討を進めていった。それとともに、消費者にも“自分ごと”として取り組んでもらえるようなキャンペーンにしたいと、特設サイトを開設して、それぞれの環境行動をネットを通じて拡散できるような仕掛けを工夫した。その結果、キャンペーン期間を通じて応募総数54万件という大きな成果を得ることができたという。同社が実施する他のキャンペーンに較べて倍近い応募件数だった。
 転機になったのは、2011年3月の東日本大震災。世界の自然も大切だけど、足元の日本の自然の保護や復興に対する支援ができないかと模索していく中で、EVIとの出会いがあった。商品の購入を通じて、EVIの仲介する日本各地の森林からクレジットを購入するというキャンペーンが展開する。複数の支援先から、応募者が自由に選べる仕組みをつくって、参加者の主体的な支援の取り組みへつなげるようにしたという。
 これに加えて、抽選によって未利用木材を活用した製品などが当たるプレゼントも提供した。

EVIのプラットフォームを支える、未利用木材活用事業の開発 ?進化するEVIをめざして

クレジットを預託されている森林には、直接お伺いして現場の人たちから生の声を聴いている(写真は大館北秋田森林組合)

クレジットを預託されている森林には、直接お伺いして現場の人たちから生の声を聴いている(写真は大館北秋田森林組合)
クレジットを預託されている森林には、直接お伺いして現場の人たちから生の声を聴いている(写真は大館北秋田森林組合)

マッチングイベントで展示された、未利用木材を活用した商品の開発事例
マッチングイベントで展示された、未利用木材を活用した商品の開発事例

 EVIというクレジット流通の仕組みを構想することで、森林整備の経費を捻出する見込みが立ってきている。これは、いわば“クレジットの出口”をつくるというわけだ。
 一方、森の現場を訪れて生の話を聞くと、森林事業者の抱えるもう一つの大きな問題に直面する。
 林業が斜陽産業と言われるようになって久しい。安価な輸入材に押されて、国産材が売れなくなっている。材木が売れないから整備も伐木もされない。クレジットが売れることで整備費用に充てることはできても、間伐材も含めて伐った材木は売れないから森の中に置き捨てられたままになる。しかも植林地の多くは植えてから50年ほどを経て、今や伐期を迎えようとしている。これらの間伐材や成木となった材木の利用用途が作り出せれば、利用されないまま森の中に放置される木材の有効活用ができるようになる。いわば、“木の出口”をつくり出すわけだ。
 これらの未利用木材を加工した国産材製品を作って売り出し、搬出や加工にかかるコストを上回る利益を生み出すことで、日本の森の再生につなげていこうという構想だ。EVIでは、すでに“WOOD LUCK”という国産材から生まれた森のギフトセレクションカタログの作成に漕ぎつけた。各地の森の現場近くにある木材加工所と商品開発を進めてきた国産材ギフト製品のブランドを扱うものだ。木のカバンや木のうちわ、木製ノベルティグッズなど多彩なアイテムを取り揃える。

 これらの国産材ギフト商品は、環境意識の高い人たちにとって魅力的なプレゼントになると同時に、環境貢献型プロモーション等に使うノベルティグッズとしても最適なものになると加藤さんは言う。
 「“未利用木材の有効利用”というのは、搬出費用等のコストがかさんでしまうがゆえに利用されてこなかったわけですから、利鞘を取らないとそもそも成り立たないわけです。ただそれが日本の森の現場に還元されて森の再生につながるわけですから、お使いいただくのにも理解が得やすい。しかも、EVIを通じた環境貢献型プロモーションでは、EVIシステム自体の利用では手数料等を一切取っていませんから、それとセットでお話しした時に、それまでプラスチックなどで作っていたノベルディグッズに替えて国産材を利用したWOOD LUCK製品を使うのは、趣旨にも叶うとむしろ喜んで利用したいということになります」
 こうして、正当な利益を生み出すことにつながる“木の出口”が開かれることになったといえる。

 この“木の出口”構想は、本業のカルネコ事業部があってこそ思い付いたし、動き出すことができたといえる。実は、カルネコ事業部では自社商品のための販促ツールを制作・提供するだけでなく、効果が十分でない一律型プロモーションとそのために発生する無駄なPOPの廃棄という同じような課題と問題意識を持つ他社への外販も行っている。現在は大手食品メーカーや日用品メーカーなど数十社の顧客企業を抱え、売り上げの大半を外販が占めるようになっている。これらの顧客企業に対して、環境貢献型プロモーションのためのノベルティグッズとしてWOOD LUCKを提案できたことが、“木の出口”構想にとって大きな推進力となった。

EVI推進協議会の加藤孝一さんと鈴木有さん(ともにカルビー株式会社カルネコ事業部)
EVI推進協議会の加藤孝一さんと鈴木有さん(ともにカルビー株式会社カルネコ事業部)

 もうひとつ、EVIの進化のためにやらなければならないことがあると加藤さんは言う。
 「J-VERは、2011年までに32万トンが創出されています。ところが、そのうち無効化された──つまり売れた量──は、2万8千トンに過ぎないんです。まだまだ、もっともっと多くの企業さんにお使いいただいて、CO2削減の努力とともにオフセット活動をしていただくことが必要と言えます。それによって今後、クレジットの販売量の増大が期待されるわけですが、一方では事務手続きが増えていくことにもなります。事務工数がかさんで関わる人が増えていくということは、すなわち森に還元されるお金が目減りすることになります。EVIでは、そうした事務手続きを簡便化して、森のためのお金がきちんと森に還元されることに役立つシステムをご用意したいと考えています」
 すでに1つの自治体および1つの森林公社の協力を得て、システム開発に向けたモデルケースづくりに着手している。

 立ち上げから1年8か月、よくここまできたという感慨を持つと同時に、これからが本当のスタートになると、加藤さんは決意を新たにしている。


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バックナンバー

  1. 001「宅配業界初!CO2排出オフセット100%達成」
  2. 002「“エコの価値”を交換するためのプラットフォームをつくり、日本の森と水と空気を守る」-EVI推進協議会の取り組み-
  3. 003「絵のある生活(くらし)が人生を変える」 -30年目を迎えるアールビバン株式会社-

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