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「スマート・ハウスはどう進化していくか?」バックナンバー

0012017.09.26UP「スマート・ハウス」のその後-過去5年間の変遷-

「スマート・ハウスはどう進化していくか?」を連載するに際して

 お久しぶりです! 前回、この場で「スマート・ハウス」について連載したのが、2012年5月からでしたから、5年ぶりにまた連載させていただくことになりました。一年間、少しでも皆さんに面白く関心を持って読んでいただけるよう工夫していきたいと思います。どうぞ、よろしくお付き合い下さい。
 前回の連載は東日本大震災の1年後ということもあり、まだ社会的にその印象が生々しく残っている時期でした。原子力発電も全面的に停止され、全体の雰囲気としても省エネや自然・再生可能エネルギーに大きな関心が寄せられている状況でした。
 その後、5年が過ぎ、あの大震災直後の雰囲気が緩和されてくるにしたがって、最近の政情の混迷や経済状況の不透明感からくる「なんとなく」感じられる不安感の一部にエネルギー問題やそれに連なる環境対応も埋もれてしまい、それに伴って以前ほどの社会的関心の高さは感じられなくなっているようです。
 そこで、この連載では前回以降の変化を踏まえた上で、別の場【1】でも示したように「スマート・ハウス」が持続可能な社会への変革に向けた希望の光となる可能性について、少し独断と偏見も交えながら大胆に予想してみたいと思います。そして、エネルギーや環境問題への社会的関心を維持し、持続可能な社会造りに向けた意識啓発の一助になれば幸いです。

国内のエネルギー戦略の概要

【図1】国内最終エネルギー消費と実質GDPの推移(出展:平成28年度エネルギー白書、第2部、第1章、第1節、p134)
【図1】国内最終エネルギー消費と実質GDPの推移(出展:平成28年度エネルギー白書、第2部、第1章、第1節、p134)

 まず、国内のエネルギー問題への対応状況の概要について触れたいと思います。「平成28年度エネルギー白書」(2017年6月発行)に基づいて、大きなエネルギー戦略の流れをみていきましょう。

 図1は、国内の最終消費エネルギーの推移です。2005年頃をピークに総消費量は減少しており、特に2011年以降の減少が大きくなっていることがわかります。しかし、このグラフの基準にしている1973年からの増加率をみると、家庭部門:1.9倍、業務他部門(オフィスやビル):2.4倍、運輸部門:1.7倍となっており、産業部門:0.8(減少)に比べると、これらの部門への対策が不可欠であることがわかります。
 そこでエネルギー白書の中でも重要施策として、平成28年4月にまとめられた「エネルギー革新戦略」の概要が記載されています。その中で具体策として、[1]徹底した省エネ、[2]再エネの拡大、[3]新たなエネルギーシステムの構築などが挙げられています。
 前述のエネルギー消費のデータと重要課題とを合わせて考えると自動的に「家庭」を対象にしたエネルギー施策において、徹底した省エネに加えて「創エネ」機能を有し、そのためのエネルギーマネジメントシステムを備えた「スマート・ハウス」の重要性が確信できます。
 この流れは新しく作る家だけでなく、既存の家を省エネ化する「省エネリノベーション」、さらには「スマート・リノベーション」として進められようとしています。また、新築の家については省エネを越えて「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス:ZEH」によるエネルギーの自給自足化を実現しようとしており、同様にオフィスビルに対しても「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル:ZEB」を目指すようになっています。

「スマート・ハウス」の5年間の推移と今後の進展

【図2】スマートハウス・ZEH関連主要機器市場規模推移と予測(出展:矢野経済研究所プレスリリース スマートハウス・ZEH関連主要設備機器市場に関する調査結果2014)
【図2】スマートハウス・ZEH関連主要機器市場規模推移と予測(出展:矢野経済研究所プレスリリース スマートハウス・ZEH関連主要設備機器市場に関する調査結果2014)

 このように、過去5年間でエネルギー戦略からみた家に対する社会的要請のキーワードは、「スマート」から「ゼロ(Z)」に変わり、社会的要請がより大きくなってきたものと考えられます。
 矢野経済研究所が2014年に発表した予測(図2)では、2013年度の関連市場規模は8,645億円で2020年度には1兆1,795億円規模に拡大するという予測もあります(注:同社の最新2017年度版レポートでは、2016年度:7,191億円になっています)。

 また、エネルギー白書には今後の施策に対して以下のような具体的な予算化も進めています。

【事務・家庭部門における省エネ施策の主な予算化】(出展;平成28年度エネルギー白書、第3部、第2章、第1節、p264-267)

  • 住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入促進事業費補助金【2016年度当初:110億円】
  • ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)普及加速事業【2016年度補正:100億円】
  • 住宅省エネリノベーション促進事業【2015年度補正:100億円】
  • HEMS等に係る標準化に関する取組【制度】

 すでに、このような施策に対応して、スマート・ハウスやZEHに対応する生産者として「ZEHビルダー」の登録社が約6,011社(2017年8月時点)にもなっています。

 このように、「スマート・ハウス」の社会的進化は確実に展開されており、一時的なブームの段階を過ぎて、地道で着実な進化の段階に移行しているものと考えられます。何事も地道な段階に入ってから本当の実績や成果が得られるようになるものだと思います。ただ、良いことばかりではなく、スマート・ハウスが健全に社会進展していく上ではまだまだ課題も山積しています。
 次回からは関連する具体的なテーマを取り上げ、スマート・ハウスのこれからの方向性や課題などを紹介していきたいと思います。

脚注

【1】「スマート・ハウス」が持続可能な社会への変革に向けた希望の光となる可能性
 エコアカデミー(第68回)「持続可能な社会への変革に対する「スマートハウス」への期待」(オール東京62市区町村共同事業)

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このレポートへの感想

既存の家を省エネ化する「省エネリノベーション」、さらには「スマート・リノベーション」こちらを主軸にしていかないと人口減、空き家増加が進んでいるのに、山野、田畑を新築住宅にしていく経済活動が続く限り、いくらゼロにしても意味がないと思われます。
(2017.10.26)

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