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「スマート・ハウスはどう進化していくか?」バックナンバー

0062018.06.26UP「スマート・ハウス」概念の変化?AI&IoT時代のロボット化する「家」

 前々回、前回とスマート・ハウスの進化に関わりの深い要素技術(AIとIoT)の進展状況を観てきました。では、これらが実際の生活に活用されるとどのような状況が創り出されてくるのでしょうか? 今回は、想像を逞しくして、近未来型スマート・ハウスの中のある一日について、少しSFチックに説明していきたいと思います。

☆キャスト:
 夫:勝利(かつとし、37歳)
 妻:恵美(えみ、32歳)
 娘:望(のぞみ、10歳)
 AIハウス・コンシュルジュ:未来(ミク、23歳相当)

朝の目覚め

 微風に顔を撫でられて、勝利(かつとし)は目を覚ます。木々のそよぎの中、曙が緩やかに明るさを増し、徐々に意識がはっきりする。健やかな一日の始まりを感じる。ベッドサイドのセンサが検知した今朝のバイオリズムにぴったりの環境効果や調光のおかげだ。
 おっと、ベッドを出る前にいつもの体調チェック。横になったまま、天井に表示されるモニタを見て、全身の体温分布と血流状態、それに基本バイタルを確認する。
 「血圧:123?75、心拍数:48、平均体温:36.8℃、今朝もバッチリOK!」
 今日は妻の恵美が仕事の日で、勝利が主夫を分担する日。彼女のインテリア・デザインの仕事はいま佳境に入っていて、疲れもピークに達しているようだ。出勤までにはまだ余裕があるから、もう少し寝かせておいてあげよう。
 ベッドを抜けて、洗面所に行く。顔を洗い終わると、未来(ミク)が洗面台のミラーディスプレイの中から「今朝の顔色も、良好!」と話しかけてくる。
 未来(ミク)は、このスマート・ハウスを建てたときから私たちをサポートしてくれているAIハウス・コンシェルジュだ。家中に設置されているマイク&スピーカ・システムで、どこにいてもいつでも未来(ミク)と友だちのように話ができる。HEMSに装備されたAIサポートシステムである。
 「未来(ミク)、朝食作り、アシスト頼む!」、「ドンと、まかせなさい!!」
 未来(ミク)は20代前半の元気はつらつな女性の設定だが、性格は男っぽい。

キッチンで

 キッチンに立ち、お茶を飲もうとポットを蛇口にかざす。すかさず、未来(ミク)が「今朝は何人分?」と訊いてくる。「3人分!」と応えると、ちょうど540mlの水がポットに注がれる。そのまま全面IHのキッチン台に置くと、適温の87℃に沸かしてくれる。目覚ましの一服は、先週、未来(ミク)にネット注文してもらった静岡の茶畑直送の新茶だ。
 未来(ミク)に朝食をリクエストする。昨日の夕食のポトフ(野菜と肉のスープ煮込み)の残りと冷蔵庫の食材から、簡単にできる「ミネストローネ」がお勧めレシピとして、冷蔵庫のドア・ディスプレイに表示される。
 恵美を起こしに行くと、娘の望も起きてきた。ミネストローネもちょうどでき上がった。トーストとゆで卵、それにコーヒーも準備できた。望にはオレンジジュースだ。
 その時、冷蔵庫横の壁に設置してある大型の水槽ほどの大きさをした家庭用野菜工場「My農園」の中でイチゴが熟していることを、未来(ミク)が教えてくれる。じゃあ、イチゴ入りヨーグルトも添えようかな!?

お出かけ準備

 朝食をすますと、恵美はクローゼットにむかい、仕事に行く支度にかかる。デザイナーだけあって、日々の服装コーディネーションにも妥協しない。その日の気分を未来(ミク)に伝えると、化粧パタンや、それに合わせた服のデザイン・配色、装飾品やバッグの種類などを提案してくれる。いろんなトータルデザインの組合せを着せ替え人形のように恵美の身体にVR(仮想現実)でフィットさせてミラー・サイネージに映し出す。今日の身なりにも十分自信がありそうだ。
 望は、今日の放課後、ピアノのレッスンがある。児童用スマホのセキュリティ・アプリをオンにして、未来(ミク)に見守ってもらうおう。これで、夕方遅い帰り道も一安心だ。
 恵美の通勤ついでに、望はちゃっかり小学校まで送ってもらうつもりで、我が家自慢のEV車の助手席にさっさと乗り込んでいる。EV車のバッテリーは夜中のうちに未来(ミク)が満タンに充電しているから、少し遠回りでも大丈夫だろう。

我が家のエネルギーシステム

 このスマート・ハウスのエネルギーシステムは、太陽光発電と蓄電・水素エネルギーのハイブリッドシステムだ。日中の発電過多の時、できた電気で水素を作って家の基礎にある水素タンクに貯めておく。その際、一部の電気はすぐに使えるようにバッテリーにも充電しておく。このシステムで、いつも安心して安定した電力を使うことができる。もちろん、エネルギーを無駄に使わないように、全ての機器のエネルギー最適管理も、しっかりものの未来(ミク)の重要な仕事だ。


「家」のロボット化?スマート・ハウスの近未来形?

 いかがでしょうか? 今回は、パナソニックの展示情報【1】を参考にして、近未来のスマート・ハウスで生活する「ある家族」の朝の一コマを大胆にフィクションしてみました。


Wonder Life-Box 2020?2030年のより良いくらし(Channel Panasonic - Official)


 荒唐無稽な夢物語のようにも感じられるかもしれませんが、パナソニックの展示情報では今の技術の延長線上で実現可能な“2020?2030年の近未来技術”について、例えば次のようなライフスタイルを紹介しています。
 ベッドの天井モニターには、爽やかな目覚めを証明と映像で演出する「快眠サービス」が天気や街でクリップした情報を通知し、「ミリ波レーダー」によって睡眠中の体の状態を検知した情報を表示します。
 サニタリーでは、鏡の前に立つだけで、非接触センシングによって体の状態が数値化されて表示される「スマートヘルスケアナビ」、その日の予定を考慮したおすすめメイクと服のチョイスを提案する「バーチャルメイク&フィッティング」などが設備されています。
 キッチンでは、冷蔵庫の扉モニターに庫内のさまざまな情報が表示され、シンク上のモニターにはおすすめレシピが提案され、蛇口やコンロをひねらなくても必要な水量や火加減などを調整してくれます。

 ご理解いただきたいのは、AIとIoTによって支えられたスマート・ハウスは、エネルギー利用の最適化はもちろん、生活のあらゆる面で「豊かさ・快適性」と「利用効率の最大化」との両立を実現する可能性を有しているということです。
 家庭内環境管理(空調、照明、花粉やPM2.5などの有害物質管理、など)、食生活、健康管理、家事(ロボットによる掃除や洗濯など)、予定管理、セキュリティまで、幅広い領域が係わってくるでしょう。言い換えると、スマート・ハウスはそれ自体「快適・効率的生活空間を提供するロボット」と考えることができます。このような機能の実用は、すでにデモンストレーション展示できるレベルまで技術開発が進んでいます。
 スマート・ハウスを促進する国内外の動きもますます活発になっています。電機メーカーや通信業者、住宅メーカーだけでなく、自動車メーカー、医療機器メーカー、不動産業、レンタル業などあらゆる業種が参画しています。また、この進展を支援するために、例えば「一般社団法人エコーネットコンソーシアム」【2】のような団体がスマート・ハウス用機器の規格化を進めています。
 以上のように見てくると、スマート・ハウスの進化には明るい未来(みらい)を大いに期待できそうです。ただ、どんな物事もそう簡単にはいきません。
 私の研究室の研究では、HEMS利用時にあらゆる機器をセンサで監視しようとすると、現状では管理のための消費電力が無視できなくなり、条件によってはHEMSによる省エネ効果を相殺してしまう場合も出てきました。また、大量の無線環境を実現するための家庭内の機器配置や配線、セキュリティ確保など、まだ十分顕在化していない課題が派生する可能性も多々あります【3】

 以上、昨年(2017年)の8月から1年間にわたって、「スマート・ハウス」の進化について紹介してきました。2012年5月?2013年3月に連載してきた前シリーズの後継でもあります。
 この間にもこの領域の研究や技術開発はどんどん進展しており、日々新たな情報が飛び込んできています。そんな変化の早さを十分キャッチアップして話を展開できたかは心許ないところですが、機会があればまた別の場で補足させていただきたいと思います。
 一年間、お付き合いいただき、本当にありがとうございました。


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