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「地球をグリーンにする発明家」バックナンバー

0062017.02.28UPGE流の「スマートカー」:電気自動車(EV)のパフォーマンスを最大化する、話せるバッテリー

走行性能を向上させるための示唆を、バッテリーの稼動状態から得ることはできないだろうか

 年初にラスベガスで開催された技術展示会「CES」で最も勢いが感じられたのが、電気自動車(EV)。大規模普及への幾多の壁を、いよいよ世界は打破できるだろうか。
 電気自動車という夢は1世紀以上も前に生まれ、それからクルマメーカーは競争力あるEVを作る方法を探し続けている。しかし、これまでは、その策を『バッテリー(そのもの)に尋ねてみよう』としたことはなかった。
 GEが主導するバッテリー研究コンソーシアムの主任研究員で、シニアサイエンティストのアーロン・ノブロックは、研究の経緯と成果について次のように話す。

電気自動車の愛好家だったトーマス・エジソン(左)。(写真提供:スケネクタディ科学技術博物館)
電気自動車の愛好家だったトーマス・エジソン(左)。(写真提供:スケネクタディ科学技術博物館)

 「エジソンの時代から、発明家たちはバッテリー構成やケミストリー(電極や電解液の種類の組み合わせ)についての実験をさんざん重ねてきました。しかし私たちは、『走行性能を向上させるための示唆を、バッテリーの稼動状態から得ることはできないだろうか』と思いついたのです。これが、チャレンジのあり方を一変させることになりました。研究を進めるにつれ、バッテリーからインサイトを得るためのセンサーやモデル、得たインサイトを活かす制御方法も開発しました」

 ノブロックと彼のチームは、フォード・モーター社やアンフェノール・アドバンスド・センサーズ社、ミシガン大学と共同で、エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)との4年間にわたるプロジェクトを完了させたばかり。同プロジェクトでは、予測アルゴリズムにデータ提供する複数のセンサーを搭載したバッテリーを利用して、「話す」バッテリーを実現した。自動車の出力制御システムはバッテリーからのフィードバックに従って作動し、気象条件や、街路なのか高速道路かといった運転環境に合わせてバッテリー稼働を最適化する。

1977年にGEのエンジニアたちが製造した電気自動車(EV)GE-100。ワシントンDCで車とポーズをとるのは、GEグローバル・リサーチ本部があるスケネクタディの市長も務めたSam Stratton米下院議員。(写真提供:スケネクタディ科学技術博物館)
1977年にGEのエンジニアたちが製造した電気自動車(EV)GE-100。ワシントンDCで車とポーズをとるのは、GEグローバル・リサーチ本部があるスケネクタディの市長も務めたSam Stratton米下院議員。(写真提供:スケネクタディ科学技術博物館)

EVメーカーやドライバーが抱える多くの問題を解決するのに役立つ技術

フォード・モーター社は「話す」バッテリーパックを標準的な季節的条件を想定して設計したさまざまなシミュレーション用走行サイクルで試験した。(写真提供:GEグローバル・リサーチ)
フォード・モーター社は「話す」バッテリーパックを標準的な季節的条件を想定して設計したさまざまなシミュレーション用走行サイクルで試験した。(写真提供:GEグローバル・リサーチ)

 ミシガン大学のラボでの研究では、このシステムを作動させて10万マイル(約16万km)相当の走行をコンピューター上でシミュレーションした。さらに、フォード・モーター社のHybrid Electric Fusionのバッテリーパックに取り付けて、5,000マイル(約8,000km)の路上試験を行っている。
 この技術は、EVメーカーやドライバーが抱える多くの問題を解決するのに役立つと考えられる。たとえば、より小型で安く、効率的なバッテリーを生み出すことができるかもしれない。
 チームの研究はフォード・モーター社の76セルのバッテリーパックから始まった。最適化されたバッテリーではセル数を16減らせる見通しで、2割少なくなる計算だ。よりスマートな稼動により、さらなるバッテリー出力を引き出すことも可能だ、とチームのメンバーは話している。

GEグローバル・リサーチが1979年に作成したEVバッテリーのコンセプト。(写真提供:スケネクタディ技術科学博物館)
GEグローバル・リサーチが1979年に作成したEVバッテリーのコンセプト。(写真提供:スケネクタディ技術科学博物館)

 その他のメリットとして、バッテリーの航続距離がしばしば制限される寒冷地でもより安定した性能を発揮する点が挙げられる。制御システムにより多くの情報を与えることで、システムはバッテリーセルのウォームアップを図り厳しい条件下でも信頼性や性能を向上させられることが判明した。
 最後に挙げられるのは、バッテリーの温度とバッテリーが受けているストレスを分析することり、制御システムはバッテリーの充電状態(SOC)や劣化状態(SOH)の予測精度を上げられる点。
 チームメンバーであり、ミシガン大学工学部のジェイソン・セイジ助教授は、
 「新しいバッテリー制御センサーを活用して、利用価値や安全性、信頼性を高めるアルゴリズムを開発中です。これがあれば、バッテリー性能を正確に把握できないために過剰設計されていた従来のシステムから、余分な機能を取り除くことができ、バッテリーコストを下げることができます」
 と述べている。

条件さえ整えば、2020年までにEVの割合は10~15%に成長すると予想されている

チームの研究はフォード・モーター社の76セルのバッテリーパックから始まった。最適化されたバッテリーではセル数を16減らせる見通しで、2割少なくなる計算に。よりスマートな稼働によって、バッテリーの出力を高めることも可能。(写真提供:GEグローバル・リサーチ)
チームの研究はフォード・モーター社の76セルのバッテリーパックから始まった。最適化されたバッテリーではセル数を16減らせる見通しで、2割少なくなる計算に。よりスマートな稼働によって、バッテリーの出力を高めることも可能。(写真提供:GEグローバル・リサーチ)

 このプロジェクトは最近、同分野における多大な貢献が認められ、米電気電子技術者協会(IEEE)制御システムソサイエティ(CSS)の2016制御システム技術賞を受賞した。
 このシステムはEVの航続距離や出力、そして競争力の進展を約束するものだとノブロックは胸を張る。
 米国では、2008年にテスラモーターズ社のロードスターが発売されてから50万台強のプラグイン電気自動車が販売された。モルガン・スタンレー社のレポートによると、グローバル市場では現在販売されている自動車に占めるEVの割合はわずか1%に過ぎない。しかし、自動車メーカーがバッテリーコストの問題を解決し、かつ、サイズ、重量、航続距離、グローバルなインフラ面でのギャップ対処が図られれば、2020年までにEVの割合は10~15%に成長すると予想されている。


写真のEVに乗っているチャールズ・P・スタインメッツは1901年にGEグローバル・リサーチを創設した彼は、14個の6ボルトバッテリーを用いて時速約64kmで走行できるEVを設計したと伝わる。(写真提供:スケネクタディ科学技術博物館)
写真のEVに乗っているチャールズ・P・スタインメッツは1901年にGEグローバル・リサーチを創設した彼は、14個の6ボルトバッテリーを用いて時速約64kmで走行できるEVを設計したと伝わる。(写真提供:スケネクタディ科学技術博物館)

GEの財務担当者、サミュエル・ホワイトストーンのガレージに止められた1911年製のEV。(写真提供:スケネクタディ科学技術博物館)
GEの財務担当者、サミュエル・ホワイトストーンのガレージに止められた1911年製のEV。(写真提供:スケネクタディ科学技術博物館)


※本稿は、Jan 17, 2017に公開されたGE REPORTS JAPAN掲載記事
http://gereports.jp/post/155983299809/talking-batteries-help-evs )をもとに再構成したものです。


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