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「用語解説から読み解く環境問題」バックナンバー

0062015.07.24UP傘と要石

傘の下に守られて

 雨の日にかかせないものは、そう、傘ですね。その「傘」に喩えて表現される中の一つに、「アンブレラ種」という保全生態学の概念があります。
 個体群維持のために、エサの量など一定の条件が満たされる広い生息地(または面積)が必要な種のことを指します。地域の生態ピラミッドの最高位に位置する消費者のことです。アンブレラ種が生育できる環境を保護することで、その傘下にあるほかの種の生育をも保全することができ、広い面積にわたる生物の多様性が保たれることになるという保全上の戦略的な考え方として提唱されました。
 日本では一般的にツキノワグマやヒグマ、オオタカ、イヌワシなど大型の肉食哺乳類や猛禽類がアンブレラ種と言われることが多いのですが、保全生態学上は、大型肉食哺乳類の場合は、他の中小型哺乳類の生息地選好性との関係が必ずしも解明されていないことから、議論の余地があるとも言われます。

“キーストーン”が抜け落ちると、橋は崩壊する

 似たような言葉に、「キーストーン種」と呼ばれる生き物もいます。アンブレラ種の場合、仮に地域生態系の中から失われたとしても、必ずしも生態系全体に大きな影響が及ぶとは限りませんが、キーストーン種の場合は、その種が属する生物群集や生態系に深刻かつ甚大な影響が及びます。逆に言えば、生態系に対して大きな影響を及ぼす重要な種のことをキーストーン種と呼ぶわけです。
 古代ローマの石橋には、石組を安定させるために橋のアーチの頂上に小さい楔(くさび)型の石がはめ込まれていました。この石は「キーストーン」と呼ばれ、橋全体から見ると小さな部品に過ぎませんが、これが外れると石橋全体が崩壊してしまうことから、重要視されています。日本語では、「要石(かなめいし)」、「楔石(くさびいし)」などとも呼ばれます。この重要な役割を担う小さなピースに喩えて名付けられたのが、「キーストーン種」です。
 例えば、ラッコは大量のウニを消費するためウニの増殖が抑えられています。このため、ラッコがいなくなるとウニ個体群が大きくなり、海藻が過剰に採食されて、荒廃して海底が裸地化してしまいます。その結果、海藻を採食しているウニ以外の生物も生息できなくなってしまいます。この場合のラッコがキーストーン種になるわけです。

エコシステムという生物間の関係性

 根幹にあるのは、「生態系」という考え方です。英語では「エコシステム」。食物連鎖などの生物間の相互関係と、生物とそれを取り巻く無機的環境の間の相互関係を総合的にとらえた生物社会のまとまりを示す概念です。
 まとまりのとらえ方によって、1つの水槽の中や、1つのため池の中の生物社会を一つの生態系と呼ぶこともできるし、地球全体を一つの生態系と考えることもできます。
 こうした考えは19世紀末ごろからありましたが、1935年にイギリスの植物学者タンスレイ(A. G. Tansley 1871~1955)が生態系という概念を提唱し、広まりました。生態系は周辺環境の状況などにより変化しますが、その系の中で互いに働きかけて安定化する性質があります。しかし、強いインパクトで破綻を来たすこともあるのです。
 近年は、人間活動による急激な環境改変や意図的・非意図的な外来種の導入などが原因となって、多くの地域で生態系の急速な変化・破綻を引き起こしています。そうした中、「アンブレラ種」や「キーストーン種」などの概念によって、生態系の中でそれぞれの種が果たす役割について理解しようということなのですね。

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