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「かしこい省エネは、まちの電器屋さんに聞け!」バックナンバー

0022019.12.17UPお客様のライフスタイル、ビジネススタイルに寄り添いながら価値のある省エネ対策を

まちの電器屋さん:株式会社ナショナルヤガタ代表取締役社長 矢形修己さん
1954年、愛知県生まれ。大学卒業後、松下電器(現Panasonic)入社。電子レンジ事業部やガス機器事業部で営業や宣伝などの業務を経験する。1984年、家業である株式会社ナショナルヤガタに入社。98年より現職。名古屋市千種区の本店以外に長久手市や北名古屋市など4カ所に支店がある。
聞き手:一般社団法人環境創造研究センター専務理事、愛知県地球温暖化防止活動推進センター【1】事務局長。清本三郎さん
1953年、長野県生まれ。大学卒業後、土木コンサルタント企業に入社。橋梁や道路の設計、まちづくり事業に携わる。2013年より現職。
ナショナルヤガタ・矢形社長(左)と愛知県地球温暖化防止活動推進センターの清本事務局長

ナショナルヤガタ・矢形社長(左)と愛知県地球温暖化防止活動推進センターの清本事務局長


来年創業65周年を迎えるメーカー系の地域電器店として

 1953年の創業以来、製品を通じて安心・安全な地域社会を目指してきたナショナルヤガタは、愛知県内に468店舗ある “パナソニックショップ”の一つだ。
 60年代後半に本社を移した名古屋市千種区をホームグラウンドに、家電の販売や取り付け工事だけでなく電球や照明器具の取り替え工事、修理なども請け負ってきた。まさに“まちの電器屋さん”である。
 「高齢者が多くなってきたこともあり、こちらから出向いて商売をさせていただくことも増えました。長く商売をさせていただいているため、どこのお宅に何年製造の冷蔵庫があるというようなデータがあるので、点検や修理のタイミングで買い替えのお話ができます。そこは地域電器店の強みですね」と、語る代表取締役の矢形修己さん。
 ナショナルヤガタの顧客には「お任せするから“いいの”を持ってきて」と注文する人が多いそうだ。
 「最近の電化製品は種類も豊富で、ハイスペックになってきているため、何を選んだらいいか途方に暮れる方も多いようです。信頼されている証なのでうれしくはありますが、逆に省エネ意識、エコに対する関心は高いとは言えないでしょうね。まぁ、現在は『いいもの=省エネ製品』の時代なので、優れた製品を紹介することが自動的に省エネ家電への買い換えにはなっていますが」

愛知県名古屋市千種区に立地するナショナルヤガタ。


全社員が省エネ効果を実感 LEDによる驚くべき省エネ効果

 だからこそ、矢形さんが重要だと思っているのが社員の省エネ意識だという。
 「この製品に買い替えることでどれくらい省エネになるか、それがCO2排出量の削減、温暖化防止にどう繋がるのか、を説明する際に実感を持ってできるかどうか。その差は大きいと思っています」
 実は、矢形さんをはじめ全社員が省エネ効果を実感、共有できた1つのきっかけがあった。それは2015年に自社の店舗や事務所、倉庫などの照明器具82基をLEDに変更した結果の電気代の数字だ。
 「1年で64万円の電気代が節約できたんです。そこまで差があるとは思っていなかったので私自身も驚きました。この数字を全社員に見せたところ、社員一人ひとりの節約意識が上がり、省エネ家電をお客様に販売することに対する自信が生まれた。これがうちにとっては大きな変化でしたね」
 ナショナルヤガタの顧客は7割が個人、3割が企業や法人。商店街の美容院や八百屋さん、歯医者さんなど小規模の企業も多い。LEDへの取り換えは、規模が小さくてもできるB2B(Business to Business)【2】の省エネ買い換え提案にもなっている。

生活様式全体を見ながら モノ提案からコト提案へ

営業担当の松原亜希子さんと矢形社長

営業担当の松原亜希子さんと矢形社長

 ナショナルヤガタでは、個人の顧客には製品の性能PR だけでなく、使い方をセットでPRすることを心がけている、と営業担当の松原亜希子さん。
 「私たちはそれを『コト提案【3】』と呼んでいます。例えば、炊飯器なら『このボタンを押すとご飯が美味しく炊けますよ』ではなく『美味しいご飯のボタンはこれですよ』とお伝えします。省エネ家電はハイグレードなものが多いので高齢のお客様にはなかなか使いこなすのが難しくても、ご自分の暮らしに本当に必要な機能であれば自然と使っていただけます。さらに『炊いたごはんは保温しておくより、冷凍してレンジでチンする方がより省エネになります』ということも忘れずにお伝えしています」
 矢形さんも、「正直、私は緊急の課題である地球温暖化防止のためには省エネ家電への買い替えを促進しているだけではダメだと思います。もっとお客様の生活様式全体を見ながら、大きな意味で省エネにつながる製品やシステムのご提案をしなければならないのではないでしょうか。個人ではなく企業でも、複数の支店のある企業にネット会議ができる設備を導入してもらえれば、会議のたびに車を動かして集合する必要が減り、結果的にCO2排出量の削減になる。電気だけでなくガソリンもまたエネルギー、車の稼働率を下げるのも省エネですから」


お客様のため、地域のため 環境、安心・安全、社会貢献の「3本の矢」で恩返しを!

 現在、自社の経営者であるかたわら、愛知パナソニックショップ連合会【4】会長でもある矢形さん。これまでに連合会として実施したキャンペーンの売り上げの一部を地域で「子ども食堂」を運営するボランティア団体に寄付したり、地元の警察の依頼を受けて高齢の顧客宅にある留守番電話の設定変更を会員みんなで行い詐欺防止に一役買ったり、とさまざまな貢献活動に取り組んできた。
 「パナソニックショップの中には、うちのように50?60年続いているお店が多いんですよ。それはひとえにお客様であり、地域であり、この社会のおかげです。だったら、みんなで社会にお役立ちすることで返していこうよ、ということで環境、安心・安全、社会貢献の「3本の矢」でロードマップを作り活動しています。」

愛知PS連合が自主基準制度として取り組む、「アプライアンスマイスター店」の表示ステッカー

愛知PS連合が自主基準制度として取り組む、「アプライアンスマイスター店」の表示ステッカー

 さらに愛知県パナソニックショップ連合会では、今年1月から全国に先駆け「アプライアンスマイスター制度」を始めた。安全な工事をすること、ガスを放出しない、きちんとリサイクルに出すこと、などのコンプライアンスを遵守するショップを認定する自主基準制度だという。
 「私たちは商いの前にまず、お客様の安心と安全の確保を第一に考えなければなりません。製品に関する安心を担うのはメーカーですが、製品を安全に使ってもらうには正しい取り付け工事や正しい使い方を知ってもらうことが必要になってきます。その安全を担っているのが、私たち地域電器店です。これまでに登録した店舗数は369。やると決めたら、一斉にやる! それがメーカー系地域電器店の強み。その調子で温暖化防止対策にもどんどん積極的に取り組んでいきたいですね」


株式会社ナショナルヤガタ代表取締役社長 矢形修己さん

株式会社ナショナルヤガタ代表取締役社長 矢形修己さん


愛知中パナソニックショップ会によるCO2削減キャンペーンのトライアル展開

 今回のインタビュー訪問の後、愛知中パナソニックショップ会が、2019年11月?12月にかけてCO2削減キャンペーンのトライアル展開を実施すると連絡いただいた。
 通常のキャンペーンでは商品値引きによって販売促進をめざすが、今回のキャンペーンではCO2削減効果の見える化を目的として購入者に電気代データの提供を呼びかけ、同意いただき、対象機種をお買い上げいただいた場合、モニター費用をお渡しするというものだという。加盟全店の販売目標から、合計の年間CO2削減量として約30トンをめざす。
 さらに、このトライアル実施を受けて、来春2月?4月のキャンペーンでは、愛知・岐阜・三重・静岡のまちの電器屋全店でのCO2削減キャンペーンの開催を予定している。

用語解説

【1】地域地球温暖化防止活動推進センター
 地球温暖化対策推進法(1998)に基づいて、都道府県知事並びに政令指定都市及び中核市の長によって指定されるセンターで、主な業務は、「地球温暖化の現状及び対策の重要性に関する啓発・広報活動」「推進員及び民間団体の活動支援」「温室効果ガス排出抑制等の措置に関する照会・相談・助言」「温室効果ガスの排出実態に関する調査及び情報・資料の収集・分析」「地域住民の活動促進のため分析結果の提供」「指定元地方公共団体実行計画の達成のための協力」などと規定されている。平成20年の法改正により、都道府県のみならず、指定都市等による指定ができるようになった。
 1999年4月に財団法人北海道環境財団が北海道地球温暖化防止活動推進センターとして、全国に先駆けて指定されたのを皮切りに、2019年10月現在、全国47都道府県及び12市で合計59の地域地球温暖化防止活動推進センターが指定されている。
・地域温暖化防止活動推進センター:http://jccca.org/trend_region/center/
【2】B2B
 「B2B」(もしくは「B to B」)とは、Business to Businessの略で、企業(法人)と企業(法人)の間の取引を表すマーケティング用語。企業と消費者との取引を示す「B2C(B to C)」(Business to Consumer)と比べて、扱う金額や量などは大きくなる傾向がある。
【3】コト提案
 商品やサービスを売る「モノ提案」ではなく、手に入れたモノによってできる体験、得られる価値を売る(提案する)こと。この場合、モノはあくまでも手段となる。
 例えば、モノ提案だと「このボタンを押すと美味しいご飯が炊ける」だがコト提案だと「美味しいご飯が炊けるボタンはこれ」となる。
【4】パナソニックショップ連合会
 パナソニックショップは、パナソニックグループ(旧松下グループ)各社の製品を取次・販売する特約店(電器店)の通称。製品提案から販売・アフターサービスを一貫して行っている。パナソニックショップの集まりである地域会と、それらを束ねた地域連合会などが組織されている。
・街のでんきやさん パナソニックの店: https://ps-hp.jpn.panasonic.com/ps/

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