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「江戸・東京の名庭園を歩く」バックナンバー

0032018.12.11UP東京に残る江戸の大名庭園

金閣寺、銀閣寺庭園並の国宝級庭園が東京にある!

 東京に残された江戸の大名庭園は、小石川後楽園、浜離宮恩賜庭園、六義園、旧芝離宮恩賜庭園の4か所で、すべて文化財庭園です。東京都は文化財庭園を「法令や条例に基づき、名勝等に指定されている庭園を文化財庭園と称している」としています。
 小石川後楽園は、国指定特別史跡・特別名勝です。浜離宮恩賜庭園は国指定特別名勝・特別史跡です。この2庭園は特別史跡と特別名勝の二重指定を受けています。このように二重指定を受けている庭園は国宝級といわれ、このほかには金閣寺庭園、銀閣寺庭園、醍醐寺三宝院庭園、平城京左京三条二坊宮跡庭園の合計6か所だけです。ということは、東京に金閣寺、銀閣寺庭園と同じ価値のある庭園があるのです。
 また、六義園は国指定特別名勝です。兼六園や岡山後楽園も同様に特別名勝です。旧芝離宮庭園は国指定名勝です。三渓園や大仙院庭園も国指定名勝です。

国指定特別史跡と特別名勝の二重指定を受けている、金閣寺庭園。
国指定特別史跡と特別名勝の二重指定を受けている、金閣寺庭園。

同じく特別史跡・特別名勝の二重指定を受けている、銀閣寺庭園。
同じく特別史跡・特別名勝の二重指定を受けている、銀閣寺庭園。

江戸時代と現代に見る庭園の違い

眺望を阻害するビル(旧芝離宮恩賜庭園)
眺望を阻害するビル(旧芝離宮恩賜庭園)

 さて、これらの大名庭園は当時のままの完全な姿で残っているわけではなく、自然災害や人為的な影響を受けて変貌しています。
 近年でいえば、未曾有の震災といわれた関東大震災や東京大空襲で、主要な建物や名木を失うなど大きなダメージを受けています。
 今、私たちが眼にしている庭園は、先人たちが被害を受け無惨な姿の庭園を、大変な努力をして失われた建物や樹木を元の姿に復元した結果なのです。
 このように、庭園は人為的、自然的影響を受けます。それが庭園の宿命なのです。したがって、庭園は変わっていくものなのです。多分、江戸時代に造られた時の庭園は今の姿とはかなり違う景色を見せていたと思います。


浜離宮恩賜庭園に復元された松の御茶屋。
浜離宮恩賜庭園に復元された松の御茶屋。

 江戸時代と現代に見る庭園との違いは、まず、庭園の周囲にビルが林立し、富士山や筑波山の眺望が失われていることです。また、庭園を訪れる人の数も圧倒的に違います。
 現在、六義園のシダレザクラが咲く頃には、1日最大で4万人くらいの入園者となります。対して江戸時代には、五代将軍徳川綱吉の実母である桂昌院が訪れた際でも、百人程度だったと思われます。
 また、樹木の様子が違います。小石川後楽園ではモミが主な樹木だったのですが、今は1本もありません。また、水量や透明度が違いますし、現在はコンクリートが使われたりしています。
 もし水戸黄門様がタイムスリップしてきて小石川後楽園を見たらどう思うのでしょうか。そもそも名前が違うと無礼打ちにされそうです。岡山の「後楽園」が大正8年(1919)に名勝指定を受けたことを知ったら、岡山藩をお取つぶしにするかもしれません。


今の大名庭園の見方 「観・知・楽」

 では、今日、庭をどうやって見ればよいのでしょうか。『観』るは、人間の持っている能力である想像力を発揮することです。林立するビルを見えないものとする能力を養う必要があります。そして将軍様やお殿様、奥方様になった気分で庭を見れば、江戸時代の庭が見えてくるはずです。ある意味で、それが現代人の庭を見る楽しみであるかもしれません。
 『知』るは、庭園ガイドボランティアの解説ツアーに参加することをおすすめします。庭園の歴史、見どころについて知ることができます。
 さて、お正月になると庭園は装いを改めます。入口に門松を飾り、マツには雪吊やこも巻き、ソテツには霜よけを施します。
 浜離宮恩賜庭園では、将軍家の御鷹場があったことにちなみ、鷹狩の技「放鷹術」が実演されます。また、将軍が海辺で船の演奏を楽しんだという御座船が日の出桟橋に復元されています。
 今では中々味わえなくなった江戸の雰囲気を、御茶屋で抹茶を一服頂きながら、江戸時代に思いを馳せるのも庭園の『楽』しみ方のひとつです。

小石川後楽園一つ松雪吊。
小石川後楽園一つ松雪吊。

同じく、小石川後楽園で見られる霜よけ。
同じく、小石川後楽園で見られる霜よけ。

現在東京湾を運航している御座船安宅丸は、徳川3代将軍家光公の命によって造られた伝説の巨船「安宅丸」をテーマにしたクルーズ船。
現在東京湾を運航している御座船安宅丸は、徳川3代将軍家光公の命によって造られた伝説の巨船「安宅丸」をテーマにしたクルーズ船。

浜離宮中島の御茶屋。
浜離宮中島の御茶屋。


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