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「フードバンクが“食”をつなぐ」バックナンバー

0042017.05.30UP食品と市民活動-信頼を得るために-

食品を扱う上で必要な信用

 全国のフードバンク団体で年間に100トンを超える取扱量のある団体は、全体のおよそ2割です。多くの団体が10トン未満の取扱量で活動しています。団体の中には自宅や駐車場などを倉庫がわりにして活動をしている団体もあれば、食品関連企業と同様に大型冷蔵施設を活用している団体もあります。

昨年オープンしたセカンドハーベスト・ジャパンのセントラルキッチン。営業許可も取得し、より安全で衛生的な環境で調理を行えるようになり、行政と連携する機会も増加した。
昨年オープンしたセカンドハーベスト・ジャパンのセントラルキッチン。営業許可も取得し、より安全で衛生的な環境で調理を行えるようになり、行政と連携する機会も増加した。

 食品を取り扱う活動を行う上で最も気にかけなければならないのは、食中毒などの事故発生リスクです。日本では企業による食品の自主回収が年間およそ1,000件あります。食品のリコール情報を更新しているサイトなどを見ると、異物混入なども頻繁に見受けられます。
 通常、食品を事業として取り扱うためには、事業場の衛生管理とその知識はもちろんのこと、様々な資格や許可、リスクマネージメントの体制が必要になります。しかし、福祉目的の無償配布となると、営業許可の有無なども含めて、どこまで何が必要なのかというのがグレーになっています。

引き下げられない食の安全

 海外ではフードセーフティネットを築くため、賞味期限切れ(消費期限ではなく)の食品を生活困窮者へ提供する福祉団体や、コミュニティ冷蔵庫と呼ばれて誰もが自由に食品の寄付や引き取りができる冷蔵庫など、多様な仕組みがあります。しかし日本でそれらの取り組みを行うのは品質管理上、非常に難しいことです。
 日本でフードセーフティネットを構築するのに大きな課題となっているのは、食の安全への意識の高さです。課題といっても、ネガティブな意味ではありません。
 2011年のデータで比較すると、アメリカでは食中毒による死者が3,037名発生しているのに対して、日本では11名でした。最近のデータでも、日本の食中毒による死亡事故は2015年に6名、2016年には14名と、年間10名前後で推移しています。日本における食品への安全意識の高さは、食にかかる重大事故の少なさと相対関係にあるといえます。

外部に定期的に依頼しているフードバンク倉庫の衛生管理監査の様子。温度管理の方法や注意点などを専門家から学ぶ。
外部に定期的に依頼しているフードバンク倉庫の衛生管理監査の様子。温度管理の方法や注意点などを専門家から学ぶ。

 食料支援でも、「食べるのに困っている人たちなのだから、多少のリスクがあっても…」と品質管理基準を引き下げることはできません。食品の品質を守るため、市民活動団体も企業と同じような、高い品質管理基準と危機管理の体制を保たなくてはいけません。福祉目的の場合、さらに転売などのリスクが生じないように、最終消費者まで把握するための管理や追跡可能性(トレイサビリティ)も必要です。そのためには安全意識の徹底とともに、専従スタッフの雇用や設備投資など多額の資金も必要となります。

フードバンクだけに限ったことではない

 日本の食の安全意識の高さが課題となるのはフードバンクだけでなく、食に関わる市民の取り組み全般に言えることです。典型的な例の一つに、ドギーバックの取り組みがあります。ドギーバック(Doggy bag)とは、レストランなどで食べきれなかった料理を無駄にしないよう持ち帰るための袋や容器のことです。欧米では一般的ですが、日本の飲食店では衛生上のリスクの観点から食べ残しの持ち帰りを禁止している店が多く、なかなか普及していません。
 ここ数年、爆発的に広がりを見せる「子ども食堂」でも、食の安全確保が課題の一つになっています。「子ども食堂」とは、定義はさまざまですが、主に子どもに無料または100円~300円ほどの低額で食事を提供する活動のことで、子どもたちの居場所づくり等を目的に、現在、全国に300ほどあると言われています。通常の食堂では、洗浄設備や計器類を整え、確認検査を受けて営業許可を取らなくてはなりませんが、子ども食堂のような福祉目的の場合、許可は必要ないと判断されることも多くなっています。対策として「福祉目的の食事提供行為における食品衛生管理指針」を特別に設けている岡山県のような地域もあります。

グレーのままでは得られぬ信用

今年3月にオープンしたキッズカフェ(子ども食堂)。親が安心して子どもを預けることができ、子どもが安心して過ごすことのできる、開放感のあるスペースが出来た。
今年3月にオープンしたキッズカフェ(子ども食堂)。親が安心して子どもを預けることができ、子どもが安心して過ごすことのできる、開放感のあるスペースが出来た。

 セカンドハーベスト・ジャパンでは、この3月に、子ども食堂”Kids Café”をオープンしました。営業許可も取り、管理栄養士の職員も配置しています。
 Kids Caféでは学習支援なども行なっています。これまでパントリーなどで食品を受け取りに来た際に、親が食品を選んでいる間、手持ち無沙汰にしていた子どもたちが、勉強をしたり食事をしたりと有意義に過ごすことができるようになりました。
 外部の衛生管理監査を定期的に受ける体制も、現在行っている倉庫周りだけでなく、Kids Caféでも行えるよう準備しているほか、利用を登録制にしていることで、どの子どもに食事を提供しているのか把握できるようになっています。
 Kids Caféの運営はスポンサーの協力があって実現していることですが、営業許可が取れる環境を整えるのに大変な費用がかかりました。

 今後、日本で食品を取り扱う福祉活動がさらに広がっていくためには、活動を行う団体がより一層、食品の品質管理に必要な知識を身につけ、危機管理を徹底するための体制整備が必要となります。
 “フードバンクへの寄贈も利用も安心”という風潮を作っていくことが、余剰食品を活用したフードセーフティネットの構築には必要不可欠です。


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