ごみ・リサイクル
廃棄物問題に対する取り組み
その他の取り組み
- 逆工場(インバース・マニュファクチャリング)
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これからの「持続可能な製造業」のあり方を示す考え方の一つである。この考え方の背景には、地球は循環系として安定を保っているのであり、物質もエネルギーも、複雑であるがすべて固有のループに沿って循環しているということがある。したがって、資源を入手して製品を市場に放出するという現在の製造業は、持続性に欠けるという意味で不完全であって、循環的な製品ライフサイクルを構築し、そのライフサイクル全般に関わる産業、すなわち、「ライフサイクル産業」に発展する必要がある。このようなライフサイクル産業としての新しい製造業のあり方を「インバース・マニュファクチャリング」と呼んでいる。
インバース・マニュファクチャリングとは、単なる資源リサイクルの研究とは異なり、ライフサイクル設計、製品の長寿命化、メンテナンス技術、自己修復、成長する製品(使用者のニーズや家族構成の変化に応じて形態や機能が変えられる製品)などといった、従来、環境問題とはあまり関連していなかった技術を基礎に、いままでとは違った視点に立って研究を行うものである。そしてその目的は、資源・エネルギーの使用量、廃棄物、および環境負荷を、全体として最少化するような循環型製品ライフサイクル・システムを実現することにある。
インバース・マニュファクチャリングが目指すべき製品ライフサイクルは、以下の5点に集約できる。
- 閉じたループによる循環型製品ライフサイクルの実現
- リサイクルだけでなく、
- 製品を長寿命化するメンテナンス
- 補修、部品交換などによる製品の再生
- 部品の別の製品へのリユース
などを中心とした、できるだけ「小さな」閉ループの実現。
- 製品の量によるのではなく、製品機能により社会的要求を充足する「量的充足から質的充足への転換」
- 足りない人工物だけを新たに作る。つまり、社会ストックとしての人工物の存在を前提とし、その循環を実現させる適量生産。
- 製品の製造販売のみを対象とする「製造業」から、製品のライフサイクル全体で付加価値を追求し、「量的充足から質的充足への転換」と閉ループ型ライフサイクルを実現する「ライフサイクル産業」への転換。
(「インバース・マニュファクチャリング」,梅田 靖, 株式会社工業調査会 より)
- ITを用いた廃棄物の管理
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最近、ITを活用して廃棄物を管理するという事例がみられる。例えば、廃棄物収集車にGPS装置を搭載し、廃棄物の積み込み地点、走行ルート、荷下ろし地点を特定することで不法投棄を防止するとともに、効率的な輸送計画を実現する事例や、ごみ収集車に携帯端末を導入し、ごみ収集地点でごみの量を入力して清掃工場に情報を集約することにより、ごみが清掃工場に到着する前に受入側で処理体制が準備できるようにする事例などがある。
- リサイクル部品を利用する場合の自動車保険
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自動車事故が起きた場合に、修理用部品として、新品よりも安価なリサイクル部品を利用することを条件に、保険料を低く設定する自動車保険が発売されている。部品リユースの促進のために注目される取り組みである。
- 廃棄物交換システム
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ある会社から排出された廃棄物でも、別の会社では原料等として利用できる可能性がある。そこで、都道府県を中心に「排出企業と受入企業」をつなぐ廃棄物交換システムの運用が行われている。一部では、インターネットを利用して廃棄物の需給情報を提供している事例もある。
リサイクル需給情報交流促進事業
- ゼロエミッションとエコタウンプロジェクト
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「ゼロ・エミッション」という言葉は、1994年に国連大学から「ゼロ・エミッション研究構想」として出されたものであり、その究極の姿は、ある産業から出てくる廃棄物(国連大学では、「廃棄物」という言葉ではなく「未利用資源」という言葉を用いている)を、別の産業で使用し、さらにその産業から出てきた未利用資源を別の産業が使用するという産業間の連携ネットワークが形成された状態である。国連大学による提唱が行われて以来、いろいろな場面でこの言葉が使われ、社会に広く浸透してきている。
「工場・事業所におけるゼロ・エミッション」としては、電気・電子機器、ビール等の飲料、自動車、製紙、セメントなどの業界で、大手メーカや先進的企業を中心に取り組みが進められている。ゼロ・エミッションというと、素材リサイクルの徹底や再生資源の受入れという「再資源化(Recycle)」が注目されがちであるが、実際には、製造工程の見直しや歩留まりの向上による「発生抑制(Reduce)」、回収した使用済み製品の部品や流通資材の「再使用 (Reuse)」に関する取り組みも多く見られる。さらに、再使用、再資源化を容易にするための設計段階での取り組み(リサイクルしやすい材料の使用、分解を容易にするための設計変更など)も行われている。
ゼロ・エミッションを支援する施策の一つとして、経済産業省のエコタウン事業が挙げられる。これは、ゼロエミッション構想を基本構想として、個々の地域におけるこれまでの産業集積を活かした地域振興と循環型経済システムの構築を目指して平成9年度に創設された制度であり、平成13年9月現在、14地域が承認されている。既に稼働中の施設も含め、今後稼働するエコタウン施設が、地域のゼロ・エミッションと循環型経済システムの構築をどのように牽引していくかが注目される。
(週間エコノミスト, 2001年2月5日号「図説 日本経済2001」より)
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