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「ミュージアムグッズを入り口に」バックナンバー

0062022.07.19UP【明治の森高尾国定公園 東京都高尾ビジターセンター】ビジターセンターの発信とオリジナルグッズの役割「山のお宝シリーズ【ピンバッチ】」

生き物を探すきっかけとしてのミュージアムグッズ

 東京近郊にお住いの皆さんにとってはお馴染みの高尾山は、古くから山岳信仰の場であり、昭和42(1967)年に明治の森高尾国定公園に指定されました。高尾山が冷温帯と暖温帯の境界にあるため、それぞれの気候区の生物を確認することができます。多くの種の動植物が生息しているので、自然観察をたっぷりと楽しめる環境です。
 高尾山の山頂にある、明治の森高尾国定公園 東京都高尾ビジターセンター(以下、高尾ビジターセンター)のグッズが素敵です。クリアファイルや手ぬぐい、Tシャツなどは高尾山に生息する生き物の魅力が描かれており、体験の記憶を持ち帰るには最適。日常使いしたくなる素敵なデザインにもグッときます。
 おすすめは「山のお宝シリーズ【ピンバッチ】」です。その名の通り、高尾山で見つけられる「宝物」がピンバッチになっています。葉の真ん中を丸く食べるムササビの食痕、目が覚めるような青さのカケスの羽、1年ごとに生え変わるシカの角、移動調査のため翅にマーキングされたアサギマダラ…山中で発見できる生き物の痕跡や気配に目を向けることができるので、とても興味深いですね。服に付けてもかわいいですし、山歩きの記念にカバンに付けてもとっても素敵です。
 このピンバッチは台紙にも注目してほしいです。そのお宝の持ち主である生き物の生態などが記載されており、まるで現場でインタープリター(解説員)からお話を聞いているみたい。山歩きの思い出を書き留めるノートを付けている方がいましたら、一緒にページに貼ってみるのもおすすめします。

山のお宝シリーズ【ピンバッチ】 vol.1 ムササビ食痕、vol.2 カケスの羽、vol.3 シカの角 720円(税込)(写真提供:明治の森高尾国定公園 東京都高尾ビジターセンター)

山のお宝シリーズ【ピンバッチ】
vol.1 ムササビ食痕、
vol.2 カケスの羽、
vol.3 シカの角 720円(税込)
(写真提供:明治の森高尾国定公園 東京都高尾ビジターセンター)

岡山県吉永町の田倉牛神社における牛神様(復元)の展示の様子。(写真提供:奥州市牛の博物館)

vol.4 旅するアサギマダラ 
750円(税込)
(写真提供:明治の森高尾国定公園 東京都高尾ビジターセンター)


高尾山で見つかるアサギマダラの謎

 筆者が個人的に高尾山で見てみたいのが、マーキングされたアサギマダラ。「山のお宝シリーズ【ピンバッチ】」では第4弾として発売されていますね。アサギマダラは長距離の渡りをするチョウとして知られており、タテハチョウ科の仲間の蝶で、ほぼ日本全国に分布しています。成虫になると春から夏にかけて南から北へ移動し、移動先で世代を重ねた後、秋に南へ移動します。このアサギマダラの渡りについては謎だらけ。何のために長距離を移動するのか、なぜ方角が分かるのか、渡りに使う体力を体内のどこに蓄えているのかなど、まだ解明されていないことが多いのです。
 そこで行われているのがマーキング調査です。マーキング調査は、調査対象に印をつけ追跡することで、行動の様子などを探る調査方法のこと。アサギマダラの調査では、翅(はね)に油性ペンで、調査地名、調査日、調査者名などの識別情報を記載し、後日、印のついたアサギマダラを再調査することで、彼らの行動を予測しているのです。この再調査では、マーキングされたアサギマダラの個体を発見した人が、マーキングした地域や調査団体に情報を寄せることで成立しています。多くの人の協力によって成り立つ調査方法なのですね。
 高尾山で時折見かけるアサギマダラにも、このマーキングの証が付いていることがあるそうです。福島県や愛知県でマーキングされたと考えられる個体が見られたこともあったそうで、直線距離で考えると200㎞も飛んできたことに!改めてアサギマダラの不思議さに引き込まれます。

マーキングされたアサギマダラは高尾山で見かけることも。(写真提供:明治の森高尾国定公園 東京都高尾ビジターセンター)

マーキングされたアサギマダラは
高尾山で見かけることも。
(写真提供:明治の森高尾国定公園 東京都高尾ビジターセンター)

ビジターセンターとオリジナルグッズのつながり

 このような話を聞いていると、高尾山に生息する生き物たちにだんだん会いたくなってきませんか?より深く高尾山について学びたくなってきませんか?そんなあなたには高尾ビジターセンターの館内にある、高尾山の歴史や自然にまつわる展示や、動植物の名前を検索できるシステムの利用もおすすめです。そして、自然体験プログラムも毎日開催されていますし、そのひとつであるガイドウォークが興味深いんです。インタープリターと山頂周辺を散策し、季節ごとの自然の姿を発見するこのプログラム、天候や担当スタッフによっても内容が異なるので、訪れるたびに参加してみたくなります。
 展示、自然体験プログラムなどを通じ、自然に親しむ力を養うことも、ビジターセンターの大切な役割のひとつ。オリジナルグッズがその一助になればいいなと筆者は考えているので、高尾ビジターセンターのオリジナルグッズのラインナップにはいつも勇気をもらっています。ビジターセンターの活動や地域の自然とリンクしたオリジナルグッズがあることで、参加者の学びを定着させる作用があると考えます。博物館活動としてのミュージアムグッズの在り方を考えるとき、筆者は「また高尾山に登らなくちゃな」という気持ちになるのです。

インタープリター(解説員)によるガイドウォーク。(写真提供:明治の森高尾国定公園 東京都高尾ビジターセンター)

インタープリター(解説員)による
ガイドウォーク。
(写真提供:明治の森高尾国定公園 東京都高尾ビジターセンター)

高尾山の自然を紹介したニュースレター「のぶすま」も人気。(写真提供:東京都高尾ビジターセンター))

高尾山の自然を紹介した
ニュースレター「のぶすま」も人気。
(写真提供:東京都高尾ビジターセンター)
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  2. 002「【鳥羽市立 海の博物館】海と生きる姿を描いた「海女さんメモロール」」
  3. 003「【京都水族館】実物を観察しているみたい「オオサンショウウオぬいぐるみ」」
  4. 004「【知床羅臼ビジターセンター】野生動物のきらめきを手に「シレトコ野帳」」
  5. 005「【奥州市牛の博物館】牛のこと、牛と私たちのこと「牛品種手ぬぐい」」
  6. 006「【明治の森高尾国定公園 東京都高尾ビジターセンター】ビジターセンターの発信とオリジナルグッズの役割「山のお宝シリーズ【ピンバッチ】」」
  7. 007「【那須どうぶつ王国】ライチョウが愛おしくなるクッキー「雷鳥クッキー」」
  8. 008「【竹中大工道具館】道具を残し、職人技を伝える「キーホルダー」」
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  10. 010「【中山道広重美術館】ある旅の日の、江戸時代のあなたへ」 -「広重おじさんトランプカード〈東海道五十三次〉」-
  11. 011「【松戸市立博物館】歴史は遠い日の過去ではない「2DKの住まい(マスキングテープ)」」

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