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「大学で学ぶエコ」バックナンバー

0062010.03.23UP卒業研究は大変だけど、大切なものを得る体験である

卒業研究のカリキュラムと私のゼミの進め方

Aくんと再生池
卒業研究で耕作放棄田にマルタニシの再生池をつくる取り組みを行っているAくん。Aくんの後ろに見えるのが試験的につくった再生池。

 ゼミの時間は、2年の後期からはじまる。ゼミとは、少人数でより専門的な内容を自ら研究し、発表・討論を行う形式の授業で、週に1コマ(90分)の時間が割り当てられている。基本的にはこれが4年まで続き、卒業研究の基礎と、実験・調査、まとめを行う仕組みになっている。もちろん、それ以外の時間にも実験・調査は行われる。一方、就職活動などで研究活動が大幅に中断されることもある。
 私のゼミの学生は10-20人であり、一人ひとりが「自分がやりたい」と思うテーマを決め、3年の初めから本格的にそれに取り組む。ゼミ生は、主に野生生物の行動や生態、保全などに関心がある学生達である。私は今、昨今の学生諸君の特性や、就職活動の状況、他の講義の受講状態などを考慮しながら、次のようなやり方で、ゼミ活動を進めている。
 ゼミの開始時期、つまり2年の10月からの半年間は、テーマ選びのために、先輩(3?4年生)から現在進行形の研究について話を聞いたり、実際に研究の場所に行って先輩を“観察”したりする。最初から自分で研究を始めたいという新ゼミ生には、テーマなどについて相談した後、すぐ始めてもらう場合もある。いずれにしろ、野外調査や実験が主となる私のゼミの卒業研究は、ほとんどの学生諸君にとって、はじめは実感がわかない。つまり、そもそも研究とはどんなものか、どれくらい難しく、どれくらい労力が必要なのか…わからないのだ。
 私が講義で話している研究結果は、私も含めた専門の研究者が何年もかけて行った成果なのだが、自分にも簡単にすぐそんなことができると思う学生は多い。実習を受講した学生の中にも、実習の一項目がそのまま卒業研究になると思っていた者がいる。実際には、そもそも実験や調査のデータをとれるようになるまで、結果には出ない表面下のたくさんの経験が必要なのである。だから、テーマや、その実施方法を決めていくときには、私は何度も学生と話をして、研究対象となる生物に接し、現場に行って学生と一緒に作業をする。

一人ひとりに自分がやりたいテーマを考えてもらう理由

 手間のかかることであっても、私は、こちらがお膳立てした設備での無難なテーマを与えるのではなく、基本的に、一人ひとりの学生がやりたいと思うテーマを勧めている。それには、次のような深い深い理由があるのだ。[1]そのほうが学生の意欲がわく。[2]学生にとって、これからの仕事にしても人生にしても、自分で試行錯誤で考え作り上げていく経験はとても大切だ。[3]これはここだけの話だが、そのほうが、私が、いろいろな生物とお近づきになれる(学生が対象にした生物は、私も立場上よく知らなければならない。そんなふうにして、私がお近づきになって、ついに“はまって”しまった生物はいろいろある。ハリガネムシやスナガニなどである)。

ゼミ生のAくんのこと

 ゼミ生のひとり、Aくんは、里山の田んぼのような湿地に生息し、自治体によってはレッドデータブックの絶滅種にも指定されている「マルタニシの生態とそれに基づいた耕作放棄田における生息地づくり」をテーマにしている。まずは、マルタニシの移動の範囲や、好む水深、泥の深さなどを調べている。Aくんは、「マルタニシの殻に番号を書いて、田んぼの水路に放し、個体ごとの移動パターンを調べたり」、「大きな水槽に“階段”をつくって、どれくらいの水深を好むかを調べたり」、「タニシの殻に、“浮き”で浮かせた紐をつけて、どれくらい深く泥中に潜るかを調べたり」・・・とにかくいろいろ自分で工夫をして実験しているのである。
 私は、Aくんをはじめとしたゼミの学生諸君が、自分で工夫して研究を進めるのを見るのが大変うれしい、頼もしい。それこそが、研究の大きな成果のひとつなのだ。
 そういうわけなので、全国の卒論で頑張っているゼミの皆さん、大変でしょうが、卒研、頑張りましょう。

マルタニシの殻に番号を書いて放流放流されたマルタニシ
マルタニシ(左)の殻に番号を書いて放流して(右)調べると、マルタニシがかなり広範囲に動き回ることがわかった。

Aくんが作った実験装置Aくんが作った実験装置
マルタニシが好む水深や泥の深さを調べるためにAくんが作った実験装置。ここだけの話であるが、けっこう失敗もしてるみたい。

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