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「温泉を巡る」バックナンバー

0082013.07.23UP越前国のあわら温泉へ

「芦原」から「あわら」へ

 福井県北端に位置するあわら市に、あわら温泉があります。福井県は北陸地方の西南部にあり、西部は日本海に面しています。北西部から西部にかけての海岸線は「越前加賀海岸国定公園」に指定され、自然観光資源に恵まれています。敦賀から北側は「嶺北地方(れいほくちほう)」【1】と呼ばれ、古代から「越前国」に属してきました。越前ガニや越前おろしそばをはじめ、ブランド米の「コシヒカリ」の誕生地としても知られる豊かな食文化がある地域です。
 あわら市は2004(平成16)年に芦原町(あわらちょう)と金津町が合併して新しい市が形成されました。芦原町の時代までは「芦原温泉」と漢字で表記されていましたが、合併後は「あわら温泉」と平仮名で表記されるようになりました。

田園風景の中にあるあわら温泉
田園風景の中にあるあわら温泉

あわらの温泉街
あわらの温泉街

芦原温泉の発祥

芦原温泉発祥の源泉
芦原温泉発祥の源泉

 芦原温泉は1883(明治16)年9月に開湯したと伝えられています。作物が育ちづらい荒れ地に灌漑用の井戸を掘ったところ、生暖かく塩分のある湯が湧き出したのが始まりです。今年130年を迎えますが、開湯した当時は「芦原」という地名はなく「十楽温泉」と呼ばれて利用され始めました。翌年から隣接する「舟津」・「田中」・「二面」の旧村で温泉井戸の掘削が次々に進められ、60℃前後の温泉が湧出したという記録が残されています。現在でも泉質は塩化物泉で、無色透明な塩分を含んだ温泉です。
 舟津村では「阿原」という地積の田んぼを掘削して温泉開発に成功し、この源泉を中心に温泉集落が形成され始めました。付近一帯は湿地帯で「蘆(あし)」が繁っていたと言われています。1889(明治22)年の町村制施行で旧11ヵ村を合わせた「葦原村(あわらむら)」が誕生しますが、これは舟津村の温泉集落から名付けられた村名と伝えられています。温泉がなければ「芦原」という町名も現在の市名も違っていたのかもしれません。

福井県最大の温泉地

温泉入浴施設「セントピアあわら」
温泉入浴施設「セントピアあわら」

 現在のあわら温泉は、越前鉄道の「あわら湯のまち」駅の北側を中心に温泉街が展開しています。越前鉄道を利用すると県庁所在地の福井駅から約40分ほどです。JR北陸本線の「芦原温泉」駅からは車で10分ほどに位置しており、大阪・京都・名古屋・米原から特急列車が頻繁に運行されています。
 明治中期に開湯して大正時代から戦前まで順調に発展してきた芦原温泉は、戦後1948(昭和23)年の福井大震災と1956(昭和31)年の芦原大火の2度の大災害に見舞われます。特に芦原大火は全町壊滅的な大火災であったと記録されています。その後碁盤目状に区画整理され、比較的大規模な宿泊施設が点在する現在の温泉街が形づくられました。坂井平野の田園地帯に所在し、のどかな風景が広がっています。
 あわら温泉は、曹洞宗の大本山「永平寺」参りの精進落としの湯、関西・中京の奥座敷として発展してきました。現在のあわら温泉は、宿泊施設が24軒で旅館組合に加盟している宿は14軒、温泉入浴施設が1施設で、年間62万人ほどの観光客が宿泊する福井県最大の温泉地となっています。

あわらの温泉街

舟津温泉薬師堂
舟津温泉薬師堂

 あわら温泉の温泉街には、旅館が設置した無料の足湯や手湯などが点在しており、身近に温泉と触れあうことができます。湯巡り手形が販売され、宿のお風呂巡りも楽しめます。
 はじめて温泉が湧き出した場所は「温泉発祥地公園」として整備され、温泉井戸が残され発祥の地の碑が建てられています。この公園では毎年8月上旬に「湯かけまつり」が開催されます。また、明治期に温泉開発された旧村の舟津・二面・田中の各地区には「舟津温泉薬師堂」「二面温泉薬師堂」「田中温泉薬師神社」が設置され、これらを併せて「芦原温泉の三薬師」と呼ばれています。三ヵ所お参りすると「無病息災・延命長寿・徐病安泰」の御利益があるとされています。

旅館が設置した「足湯」
旅館が設置した「足湯」

温泉街に設置された「手湯」
温泉街に設置された「手湯」

「湯めぐり手形」参加の宿
「湯めぐり手形」参加の宿

 あわら湯のまち駅前には「あわら温泉湯のまち広場」が整備されています。この広場には、魯迅と関係の深い「藤野巌九郎記念館」が設置されています。また、「芸妓会館」も設置され、温泉文化の1つでもある芸妓への「変身体験」なども実施されています。さらに、あわら温泉屋台村「湯けむり横丁」が設置されています。これは貨物用のコンテナを改造した店舗で、赤提灯で彩られた入口をくぐると、串揚・おでん・焼鳥など屋台形式の店が10店舗並んでいます。リーズナブルな値段で地元の人々の利用も多く、観光客とのコミュニケーション場にもなっています。
 あわら温泉では、2人乗りの「湯めぐり号」というレンタサイクルがあります。福井県では条例を制定して、公道を2人乗りで合法的に走れる自転車となっています。湯巡りをはじめ、三薬師巡りや周辺の散策等に利用できて好評です。

あわら湯のまち駅前に整備された「湯のまち広場」
あわら湯のまち駅前に整備された「湯のまち広場」

湯のまち広場に設置された「藤野巌九郎記念館」
湯のまち広場に設置された「藤野巌九郎記念館」

あわら温泉屋台村「湯けむり横丁」
あわら温泉屋台村「湯けむり横丁」

2人乗りレンタサイクル「湯めぐり号」
2人乗りレンタサイクル「湯めぐり号」

周辺の観光スポット

 福井県の代表的な観光地である越前加賀海岸国定公園の「東尋坊」は、あわら温泉から車で15分ほどの場所にあります。奇岩がそびえる景観は国の天然記念物に指定され、特に海に沈みゆく夕日が見応えのあるスポットとなっています。
 このほか、永平寺や県立「恐竜博物館」などへは、あわら温泉から車で1時間ほどで行くことができます。あわら温泉は嶺北観光の拠点となっています。

夕日の東尋坊
夕日の東尋坊

福井県立「恐竜博物館」
福井県立「恐竜博物館」


注釈

【1】嶺北地方(れいほくちほう)
福井県は、北陸道(北国街道)の難所である木ノ芽峠や山中峠、栃ノ木峠を通る稜線を境界に、北側を「嶺北地方」、南側を「嶺南地方」と呼んで区別することがある。それぞれ、かつて律令制時代の旧国名より、越前地方および若狭地方とも呼ばれる。

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