メインコンテンツ ここから

「エジプト 砂漠を旅する」バックナンバー

0032010.10.21UP芸術家が集う村-ファイユーム・オアシス編-

眺めのいい村

写真1

 ファイユーム・オアシス、カルーン湖の西のはずれに、チュニスという名の村があります。高台にある村からの眺めは、眼下に広がる農園の緑、湖水の青、対岸の砂漠の乳白色、そして空の青と、連続する色彩が織りなすコントラストが美しく、古くからその景観に魅せられた詩人などが訪れていました。
 スイス人の陶芸家、エヴリン・ポレットさんは、そんな芸術家の中でも村に住みついた最初の外国人の一人です。彼女が村はずれにアトリエを構えた1960年代から、村の景観や素朴な暮らしに魅せられた作家、画家、映画製作者など、国籍を問わずクリエイティブな仕事を持つ人たちが移り住んでくるようになりました。
 1967年に第三次中東戦争が起こると、エヴリンさんはトラブルを避けて一時ヨーロッパに帰っていました。そして、数年後に再びチュニス村に戻ってみると、置いてきたアトリエや家財が少しも荒らされることなく、昔のまま残っていたそうです。

エヴリンさんの陶芸教室

 村人の誠実さに心を動かされ、アトリエを再開したエヴリンさん。貧しい農家の子どもたちが、粘土で手びねりの動物や人形を作って遊んでいることに目を留め、子どもたちの才能をのばしてみたいと、無償で陶芸教室を始めました。
 創作活動は、学校で先入観や知識を習う前に始めることが大切だと言うエヴリンさん。6~7歳から陶芸の基本を教えますが、デザインや絵のモチーフは教えません。子どもたちは遊び感覚で、オアシスの花や木、動物や魚、そして風景を自由に描き出していきます。今まで見過ごされていた身近な風景が、子どもたちの手で、つぎつぎと芸術作品に生まれ変わっていきました。生徒の何人かはプロの陶芸家として独立し、海外の作品展に出展するまでになっています。
中でも、最初に独立してアトリエを構えたラウヤさんは、村で唯一の女性陶芸家です。女性が仕事を持つことなど考えられなかった地方の農村だったので、最初は家族に大反対されました。それでも自分の力を信じたかったというラウヤさん。自分の夢を理解してくれる人に出会うまではと、一人で頑張ってきました。そうしてようやく出会ったご主人にも陶芸を教え、現在では二人で作品を作って暮らしています。

アトリエのエヴリンさん
アトリエのエヴリンさん

陶芸教室の生徒たち
陶芸教室の生徒たち

タイル作品
身近な動植物を描いた鮮やかなタイル作品

ラウヤさん
作品に囲まれ自信に満ちたラウヤさん。素敵な瞳をしていました。


アブドさんのエコロッジ

 作家のアブド・ゴベールさんは、エヴリンさんの古い友人のひとりです。カイロで雑誌記者をしていた頃から、週末を友人たちとチュニス村で過ごしていましたが、退職後は本格的に拠点を移し、ゲストハウスをオープンすることにしました。
 すべて村人に手伝ってもらって造った建物は、まわりの景観に合うように、日干煉瓦、石材と土壁、ヤシ材など、できるだけ地元の素材を使っています。客室はとてもシンプルで、柱や壁がこころなし曲がっているところはご愛嬌です。
 外壁一面に描かれているのは、生まれて初めて人に頼まれて絵を描いたという、地元農家のムハンマドさんの作品。子どもが描いたような、素朴で力強く、空想力豊かな絵に心が癒されます。このムハンマドさん、今では自称『アーティスト』として、村の仲間に『作品』の写真を見せては大自慢だそうです。
 アブドさんはゲストハウスを拠点に、NGOや社会起業家と協力してさまざまな社会活動も応援してきました。村の清掃に始まり、手工芸品販売の支援、近郊農家のための診療所の開設など。かつては女性たちのために託児所として場所を提供していたこともあったそうです。人間好き、話好き、ゴシップも大好きなアブドさん。いつも愉快な仲間に囲まれ、自然体でさまざまな活動を続けています。

客室
客室はとてもベーシック

ムハンマドさんの『作品』
素朴なムハンマドさんの『作品』

アブドさん
豪快な話しぶりのアブドさん

カルーン湖の魚料理
食事も結構いけます。カルーン湖の魚料理


チュニス村

 カイロから車で2時間ほど、カルーン湖南西の、人口5000人程の小さな農村。1952年のエジプト革命による農地改革以前は、封建領主が所有する「アバーデイヤ」とよばれる広大な領地でした。今も村民の約9割が農業・漁業に従事しています。主な生産物はオリーブと各種果樹、野菜と生花。一般の村人の家にまじって、約300軒のお洒落な別荘やセカンドハウスが点在しています。所有者の国籍はさまざまで、いずれも、芸術家や創作者、知識人など。

ファイユーム陶芸教室(Fayoum Pottery School)

小さな陶器のサイン
小さな陶器のサイン

 チュニス村の一番東のはずれにあります。併設のギャラリーでは、生徒たちが自由な発想でつくった大小さまざまな作品を買うことができます。大皿やタイルのほか、お茶碗やそば猪口にも使えそうな手頃な作品など、どれもとても洗練されています。ギャラリーが閉まっている時は、教室のスタッフに声をかければ開けてもらえます。(電話 +20-(0)84-6820405)

ザド・アル=モサフェル・エコロッジ(Zad Al-Mosafer Ecolodge)

エコロッジ入口の標識 エコロッジ入口の標識

 ザド・アル=モサフェルは「旅人の荷物」という意味。中庭を取り囲んで23室の客室があり、最大62名まで宿泊できます。
 一人一泊40エジプトポンド(約650円)。カフェテリア、プール有り。エコロッジでは、クジラの谷、ワディラヤーン保護区、カルーン湖北岸の砂漠サファリ(四輪駆動車、馬、ラクダ有り)や、バードウォッチングなど、16のツアーをアレンジしています。

Eメール:guesthouse@zadalmosaferecolodge.com
電話:+20-(0)84-6820180 携帯:+20-(0)106395590

このレポートは役に立ちましたか?→

役に立った

役に立った:3

このレポートへの感想をお送りください。
投稿いただいた感想は事務局チェック後に掲載されます。

ニックネーム
感想
 
送信する入力内容クリア

前のページへ戻る

【PR】

 

ログイン

ゲストさん、

[新規登録] [パスワードを確認]

エコナビアクションメニュー

【PR】

  • 東京環境工科専門学校 コラム連載中!