1.5℃目標
[ 1.5ドモクヒョウ ]
2015年12月に開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で合意されたパリ協定では、気候変動緩和策(地球温暖化の原因である温室効果ガスを削減する取り組み)について、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つ(2℃目標)とともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(1.5℃目標)が示された。
その後、2018年10月に採択されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の1.5℃特別報告書(正式名称は、『気候変動の脅威への世界的な対応の強化、持続可能な発展及び貧困撲滅の文脈において工業化以前の水準から1.5℃の気温上昇にかかる影響や関連する地球全体での温室効果ガス(GHG)排出経路に関する特別報告書』)において、2.0℃目標では、1.5℃目標と比べて、被害が大きく増すことが指摘された。
平均気温の上昇が1.5℃になると、50年に一度という高温は8.6倍に、10年に一度という大雨の頻度も1.5倍になるとされているが、平均気温の上昇が2℃になる場合には、それぞれ13.9倍、1.7倍にまでなると予測される。気温上昇が一時的に1.5℃を超える場合、超えない場合と比較して損失と損害が増加すること、人も自然も適応の限界に達するであろうことなども記載されている。こうした科学的知見の蓄積を背景とし、COP26の成果文書「グラスゴー気候協定」では「世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力を追求することを決意する」とされた。COP26では「パリ協定の実施ルール」が完成し、これまで努力目標であった「産業革命前からの気温上昇を1.5℃までに抑える」ことが、事実上の共通目標となったのである。
IPCCは気温上昇を約1.5℃に抑えるためには、2030年までに2010年比で世界全体のCO2排出量を約45%削減し、2050年前後には正味ゼロにすることが必要だとしている。(2023年5月作成)