越境大気汚染
[ エッキョウタイキオセン ]
大気汚染の原因物質が、数百、数千kmの遠く離れた発生源から気流に乗って運ばれてくることを長距離輸送という。このうち、特に国境線を越えるものを越境大気汚染もしくは越境輸送、越境移動などという。
東アジア、北米、ヨーロッパの各大陸内における酸性雨などの問題が典型例。ヨーロッパでは、中欧の工業地帯からの汚染物質が風下国である北欧へ被害を与え、また北米では米国北東部において五大湖を越えてカナダに及んだ大気汚染被害が外交問題に発展してきた。日本では、偏西風に乗った中国大陸や朝鮮半島からの越境大気汚染について研究されてきた。近年は、さらに大陸を越えた長距離輸送や、極地や山岳地等の人間活動の少ない場所での人工物質等の痕跡なども報告されてきている。
運ばれる汚染物質には、酸性雨の原因物質になる硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、また残留性有機汚染物質(POPs)や重金属などがあり、土壌粒子(黄砂など)に付着して遠隔地の環境に影響を及ぼす。このような国際的な環境問題の解決に際しては、被害国と加害国の双方が解決に向けて対策を講じていくことが求められる。