科学的根拠に基づく目標
[ カガクテキコンキョニモトヅクモクヒョウ ]
SBTは、「Science-based Targets」の頭文字を取った略称で、日本語では「科学的根拠に基づく目標」とも呼ばれている。SBTイニシアチブとは、企業に対し「科学的根拠」に基づく「二酸化炭素排出量削減目標」を立てることを求めるイニシアチブで、気候変動対策に関する情報開示を推進する機関投資家の連合体のCDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)によって2014年9月に設立された(この4団体が現在も連携して事務局を務めている)。
SBTイニシアチブでは、2050年といった長期的視点に基づいた、企業の温室効果ガスの削減に関するビジョンや目標を設定することを重視・推奨している。また、この目標設定を支援するためのガイダンスやツールなども策定している。2020年10月現在、SBTiのもとで意欲的な削減目標を設定することにコミットした企業は世界で1,000社を超え、パリ協定に沿った目標策定のグローバル・スタンダードとなっている。
目標設定の方法論は、CDP、WWF、WRI、UNGCの4団体が原案を開発し、パブリックコメントを受付後完成している。SBTでは、科学的根拠に基づく目標設定手法として、国際的に普及している手法を全て受け入れることとしているが、SBTイニシアチブ自身が開発した「SDA(セクター別脱炭素化アプローチ)」を強く推奨している。SDAでは、業種毎に実現すべき二酸化炭素排出削減目標が定められており、それを基準に自社の削減目標を設定していく。SDAの業種別削減目標は、IPCC第5次評価報告書で示された「RCP2.6」シナリオに基づき、パリ協定で国際合意に至った2度目標の達成のために国際エネルギー機関(IEA)が分析した各業種の遵守シナリオをベースとしている。SBTイニシアチブへの加盟プロセスは、コミットメントレターの提出、目標設定、審査、開示、となっている。2017年8月7日時点で、世界で62社がSBTに加盟。231社が加盟承認待ちである。加盟62社の内訳は、欧州34社、米国19社、日本9社。SBTに加盟している日本の代表的企業は、第一三共、小松製作所、コニカミノルタ、リコー、ソニーなどである。SBTに加盟することで、イノベーションの促進、規制の不確実性の軽減、投資家からの信用・信頼を高める、収益率と競争力を改善する、などの効果が期待される。(2021年6月改定)