直接空気回収
[ チョクセツクウキカイシュウ ]
吸着剤等工学的な手法を用いて大気中のCO2を直接吸収することにより、大気中のCO2を減少させる技術。従来、国際宇宙ステーションのような閉鎖空間で使用されてきたが、これを環境中で行うものである。
現在開発中の技術の例では、ファンを用いて空気を吸着材に通過させ、その後熱を加えてCO2を離脱、回収するシステムで140kg-CO2/日/台のものがある。回収したCO2は温室で使用されているが、これを地中等に貯留すれば大気中から除去されることになる。その他、人工樹木に吸着剤を塗布して、樹木以上にCO2を吸収させる方法などが提案されている。また、回収したCO2は、カーボンリサイクルの場合と同様にコンクリート養生に用いたり、炭酸塩鉱物化させて再利用するなどの研究が行われている。DACの設備製造、導入、運用時に必要なCO2を大幅に上回るCO2の吸収が必要とされることに加え、まだまだコストが高く実用化には問題があり、バイオマスをエネルギーとして使用し、発生するCO2を回収・貯留するBECCSに対する期待が高い。
実用化されれば、パリ協定の1.5℃目標の達成に資することが期待されている。国際エネルギー機関(IEA)の報告書(2021年)では、2050年のネットゼロ排出量を達成するシナリオでは、DACで2030年には9千万トン、2050年には約10億トンのCO2を回収すると想定している。
近年、大気中のCO2を除去・減少させる技術をネガティブエミッションあるいはCDRと呼び、研究が進んでいるが、DACはその一つである。
(2018年4月作成、2021年7月改定)