外来生物

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解説

人間による意図的または非意図的な活動によって、本来持つ移動能力を超えて、他の地域に持ち込まれ、野外に生息、生育している生物のこと。「外来」といいながら、海外だけでなく、国内の他地域から持ち込まれた生物も含む。また、個体(種)だけでなく、卵や種子、器官などを含むとともに、種単位だけでなく科単位や属単位の生物を指すことから、「外来種」に代わって「外来生物」と呼ばれるようになった。類似の用語に移入種、帰化種、侵入種などがあり、ほぼ同義として用いられることが多い。

これらの外来生物は、持ち込まれた先でもともと生育、生息していた生物(在来種)を捕食したり、競合・交雑等したりすることで、在来種の存続を脅かし、地域の生態系に大きな影響を与えることもあり、近年にわかに注目を集めている。

特に、生態系や人の生命・身体、農林水産業に対して多大な被害や影響を及ぼす、または及ぼすおそれがあるものを「侵略的外来生物」と呼ぶ。環境省及び農林水産省では、2015年3月に日本における侵略的外来生物を整理した「生態系被害防止外来種リスト」を作成(動物229種類、植物200種類の計429種を掲載)するとともに、2020年までの国の行動目標等を定めた「外来種被害防止行動計画」を策定している。

侵略的外来生物のうち、被害を防止するための措置を講じる必要のある外来生物は、外来生物法に基づく「特定外来生物」として指定し、輸入や飼養、譲渡、野外への放出などを規制するとともに、捕獲や採取等による防除が実施されている。

もともと外国から持ち込まれた「国外由来の外来生物」に対して、国内に生息する在来種がもともといなかった別の地域に持ち込まれたものを「国内由来の外来生物」と呼ぶ。

例えば、琉球列島から小笠原諸島に持ち込まれたアカギが繁茂して在来植物を駆逐した事例や、低地性のオオバコが非意図的に高山帯に持ち込まれたことで高山植物であるハクサンオオバコとの間で交雑を生じている白山国立公園の事例、サクラマス(ヤマメ)の分布域に別亜種のサツキマス(アマゴ)が放流されたことで両亜種の交雑が進行した富山県神通川の事例など、特に小面積の島嶼部や高山地域、地域ごとに分化している淡水魚などで、深刻な影響を与えている状況が数多く報告されている。在来種でも見方を変えれば外来種問題を引き起こす可能性があることに留意が必要である。(2017年9月作成)

詳細解説

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