動物福祉

[ ドウブツフクシ ]

解説

ペット、食糧、医療開発など人間のために動物が使われるのはやむを得ないが、その動物が被る痛みや苦しみは最小限に抑えなければならないという考え方。虐待や遺棄の防止、殺さざるを得ない場合も心理的、肉体的苦痛を与えない方法を採用することなどに加えて、生理的特性や行動などを考慮してストレスの少ない飼育・飼養を工夫すること(環境エンリッチメント)も動物福祉の範疇とされている。動物福祉の対象には、ペットや動物園の展示動物だけでなく、実験動物や家畜なども含まれる。

世界動物保健機関(WOAH)は、動物福祉(アニマルウェルフェア)について「動物が生活及び死亡する環境と関連する動物の身体的及び心理的状態」と定義し、動物の利用を前提とした取扱方法や管理方法に倫理的な配慮を求めている。また、アニマルウェルフェアの状況を把握するための指針として「5つの自由」(?飢え、渇き及び栄養不良からの自由、?恐怖及び苦悩からの自由、?物理的及び熱の不快からの自由、?苦痛、傷害及び疾病からの自由、?通常の行動様式を発現する自由)が示されている。

アニマルウェルフェアに先進的に取り組んでいるヨーロッパでは、EU指令としてアニマルウェルフェアに基づく飼養管理の方法が規定され、各国はEU指令に基づく法令・規則等をそれぞれに定めている。また、米国、カナダ、欧州等でも、生産者団体や関係者が独自にガイドラインを設けて取り組みを進めている。日本国内におけるアニマルウェルフェアの状況としては、家畜の飼養管理の一般原則として、動物の愛護及び管理に関する法律及び同法に基づいた「産業動物の飼養及び保管に関する基準」(環境省告示)や「動物の殺処分方法に関する指針」(環境省告示)、またアニマルウェルフェアに配慮した飼養管理を広く普及・定着させることを目的とした「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について」(農水省畜産振興課長通知)などが定められている。また、公益社団法人畜産技術協会では、畜種ごとにアニマルウェルフェアに対応した家畜の飼養管理指針(肉用牛・乳用牛・ブロイラー・採卵鶏・豚・馬)を平成21年度から順次作成・公表しており、その後もWOAHコードの採択などを踏まえて随時改訂している。(2023年5月改訂)

詳細解説

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