ブラックカーボン
[ ブラックカーボン ]
ブラックカーボン(BC)は、大気中を浮遊する微小粒子(エアロゾル)の成分の一つで、ディーゼルエンジンの排気ガス、石炭の燃焼、森林火災、薪などバイオマス燃料の燃焼など、炭素を主成分とする燃料が燃焼した際に主に発生する。大気汚染物質であると同時に、太陽光を吸収する性質があることから、大気を加熱したり、積雪や海氷面に沈着して太陽光の反射率を下げ、氷の融解を促進することで、温室効果を有し、気候変動を加速する可能性が指摘されている。
温室効果ガスとしては二酸化炭素(CO2)やクロロフルオロカーボン(CFC)などが有名であるが、それらは大気中の寿命が長く、CO2でも大気中の寿命は100年程度と言われ、大気中への排出を抑制しても短期的な温暖化抑制効果は期待できない。これに対し、短寿命気候汚染物質:short lived climate pollutants: SLCP)と呼ばれるメタン、対流圏のオゾンや大気中の微粒子などは温室効果を有するものの、大気中の寿命が短いため、短期的な温室効果の抑制効果が期待される。ブラックカーボンは、代表的なSLCPのひとつであり、その削減による地球温暖化の抑制効果が期待されている。
例えば、国立極地研究所と宇宙航空研究開発機構の調査によれば、気候変動の影響が最も顕著に現れる地域と言われている北極域では、2020年9月13日に北極海の海氷面積が観測史上2番目の小ささとなっており、地球温暖化に加えブラックカーボンの寄与が懸念されている。北極圏は地球上で最も速く温暖化が進行している地域であり、北極圏におけるBCの挙動を解明することは重要かつ緊急の課題となっている。(2022年3月作成)