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「週末は森で暮らす」バックナンバー

0032015.11.17UP森で聞くJAZZ

森で聞くJAZZは最高


森のオーディオルーム

 JAZZをこよなく愛する私のオーディオルームは、45年もの間、森の中にありました。
 伊豆半島の森の中にある一軒家を借りたのは、20代後半のときです。その家には、私が借りる直前まで、小さな女の子と両親が住んでいました。女の子が小学校に通い始めるのを機に、バス通り沿いに家を新築して引っ越したのです。
 伊豆に窯を築いたばかりの陶芸家から、空き家の情報が入ると、即決で借りることにして、間をおかずに自慢のオーディオ機器と500枚くらいのLPレコードを運び込みました。それからは、週末や休日を中心に足しげく、仕事場がある目白から新しいJAZZオーディオルームに通い始めました。
 JAZZを聞くには、アナログレコードに限ります。しかも、大音量でなければ、ウッドベースの低音の響きや、ドラムのシンバルの音を、真に味わうことなどできません。広大な森の中の一軒家なので、誰に気兼ねすることなく、アンプのボリュームをいっぱいまで回すことができます。するとウーハーが40㎝もあるJBLのスピーカーから、近くに立っていられないくらいの迫力ある音がほとばしります。
 そこで、家の全ての窓を開けてから、外に出て、雑木林の中に移動します。そのとき、家全体がスピーカーボックスになって、至高のJAZZが広葉樹の森に響きわたります。
 私は、念願のJAZZ空間を手に入れて大満足でした。しかし、折にふれて、女の子のお母さんがオーディオルームになった森の家に遊びにきて、お話の合間に「この家に戻りたいな」とつぶやくときだけ、多少、後ろめたくなりました。新しい家は、車がうるさいし、誰が来るかわからないため、いつもカギを掛けなくてはならないのが、煩わしいのだそうです。

夜の森は魑魅魍魎


夜の森に沈む一軒家

 5年くらい経ったころ突然、森の家のお母さんが亡くなった、という知らせがありました。私は、すぐ伊豆へかけつけ、葬儀に参列しました。それはまだ土地独特のしきたりが色濃く残っている法事でした。初めての不思議体験に心が高揚したためでしょうか、東京に戻る気が失せて、急に森の家に泊まりたくなりました。餅や味噌や珈琲豆などの常備があるので、1泊ぐらいは問題ありません。
 その頃になると、森の生態にも興味を持ち始めていましたので、明るいうちは、覚えたての樹や野草の花を確認しながら、森歩きを楽しむようになっていました。森に、いつも何かしらの花が必ず咲いているのは、きっと、蝶や蜂が餓死しないような自然の仕組みになっているからにちがいない、などと考えながら写真を撮っていると、一時間くらいはアッという間です。
 小屋に戻ると、参列のお礼の栞が添えられて、飲み物とお弁当が届いていました。私が突然、森の家に泊まる、と言ったので、何の用意もしていないにちがいないと、葬儀に居合わせた地元の人が心配してくれたのです。
 森が夜の闇に包まれ始めたら、いよいよJAZZの時間です。トミィー・フラナガンやビル・エバンスのピアノトリオから始まって、マイルス・デイヴィス、ソニー・クリスなどのバラード演奏ばかりを選んで、針を落とし、静かな夜にひとり浸っていました。
 真夜中頃、異変が起こりました。
 トイレの扉が、突然、開かなくなったのです。強く引っ張ると、2~3センチは動きます。でも、手を放すと、スローモーションのように元に戻って閉まってしまいます。大変なことになりました。ここは、暗い森の中を20分も歩かないと、一番近い人家にたどり着かないところです。いきなり頭の中が真っ白です。
 もう、ジョン・コルトレーン、エリック・ドルフィー、ソニー・ロリンズ、クリフォード・ブラウン…の激しいJAZZを夜明けまで、最大の音量で鳴らし続けるしかありません。近くに棲むケモノや鳥たちは、きっと迷惑だったでしょう。
 朝日が窓から差し込むようになると、原因究明の勇気が少しだけ沸いてきました。恐る恐るトイレに行き、扉の把手に手を添えたら、なんと今度はスムーズに開くではありませんか。
 あのとき、一体何が起こっていたのでしょう、答えは今もありません。

サンセット・ジャズコンサート


サンセット・ジャズコンサート

 今から15年ほど前になりますが、埼玉県飯能市の森の広場で、森の魅力を引き出すために何かいい企画はないかと相談を受けました。即座に、ジャズコンサート開催の提案をしました。
 その森の広場は、秩父連山を西側に望む傾斜地にあって、夕陽が真正面に沈んでいく、絶好のロケーションでした。趣旨を理解してくれた有名なジャズサックスプレーヤーの坂田明さんはじめ多くミュージシャンの賛同も得ることができて、200人以上もの人が、森のコンサートに集まってくれました。
 夕方になると、ヒグラシが鳴き始めました。すると、坂田さんがアドリブで、ヒグラシとコラボレーションを始めるという予想外の展開に、みんな大きな笑顔でノリノリです。
 森のコンサートは、その後、8年ほど続きました。その都度、100本を超える竹を伐って、新しくステージを組み、趣の違うお茶室を建てたりしました。
 そのとき一緒に作業した仲間が、今、多角形の森の家やツリーハウスづくりなど森の活動の中心メンバーです。
 結局、私と森の関わりは、JAZZ抜きでは考えられないようです。


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このレポートへの感想

自然の中でたくさんの思い出を共有できたことに感謝しています。
(2015.12.15)

余裕があっていいですね!
(2015.11.17)

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バックナンバー

  1. 001「森に育てられた私たち」
  2. 002「森に棲む家」
  3. 003「森で聞くJAZZ」
  4. 004「私のツリーハウス体験」
  5. 005「オオカミの森」
  6. 006「森のシンフォニー」

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